短期就活、手探り準備 高校生の採用選考1カ月延期
来春卒業する高校生の就職活動は、新型コロナウイルスの影響で企業の採用選考開始が10月16日まで1カ月延期され、いつもと違う就活戦線を迎えている。生徒たちは例年の9月スタートと異なる日程に戸惑いながらも、延期で増えた時間を面接の練習や企業研究に充てる。各校の進路担当教諭は、2社目以降を受ける場合の期間の短さやオンライン面接の対応、生徒と企業の「ミスマッチ」を課題に挙げ、独自求人の確保や生徒指導に奔走している。(深津慶太、松田亜弓、丹羽恭太)
83人が就職を希望する帯広南商業高校。9月中旬に同校を訪れると、生徒たちは放課後の進路指導室で机に向かっていた。手元にあるのは代々の卒業生が残した就職活動の記録だ。
企業ごとにとじられたファイルには、面接の席順から質問の内容まで細かく記してある。「履歴書を書き終わって、今は面接の準備。1カ月延びて余裕がある分、練習をしっかりしたい」。民間企業の事務職を目指す長井美樹さん(17)は明るく話した。
清水高校進路指導部の櫻澤大輔教諭は6月の求人公開から選考までの期間が延びた点を挙げ、「会社見学などに行く時間が取れることは逆に良かった。じっくり就職活動できている」と評価している。
1カ月延期を前向きに捉える一方、卒業までの期間が短い点を懸念する声も。帯南商の鈴木和彦進路指導部長は「求人は予想していたよりも確保できたが、もし2社目、3社目と受けなければならなくなった時に、生徒の余裕が無くならないようサポートしたい」と気を引き締める。
帯広工業高校では約130人の就職希望者のうち、30人の生徒が道外企業への就職を希望。しかし、新型コロナウイルスの影響で企業見学に行けず、インターネット上で企業説明会に臨んだ生徒もいた。
同校の竹川勲進路指導部長は「説明会では1人ずつの様子が企業側の画面に映し出されるので気が抜けない。面接もオンラインとなるので、校内に専用のブースを作る。オンライン用の面接指導をどうするか」と手探りだ。
職種に偏りも 管内求人12・5%減
帯広職安がまとめた7月末の高卒求人は1150件で、前年に比べて12・5%減った。就職希望者1人当たり1件以上ある計算だが、職安や十勝総合振興局、十勝教育局はホテル業や製造業の業界団体に対し、9月としては異例となる高卒求人の確保を要請した。
ただ、企業が特定の学校を指定するケースも多く、各校で環境は異なる。帯工では1人当たり6~7件の求人が寄せられた。「昨年よりも管内企業から来る求人の比率は高まった。設計事務所などこれまで無かった企業もあり、コロナの影響よりも技術者の人手不足の方が厳しいのでは」(竹川教諭)と推測する。
一方、卒業生の3割が就職を希望する市内のある高校では「昨年よりも求人が3割減った」と話す。女子生徒に人気の販売・事務職が少なく、倍率を考えて志望企業を変えた生徒もいて、「企業とのミスマッチが心配。早期の離職につながらなければいいが」と懸念。「就職から進学に切り替えようとしても、受験スケジュールが変わっておらず、手続きに十分な時間が取れるかどうか心配だ」と話している。