「味の八幸」が後継者探し 広尾 引き渡しまでは店継続
【広尾】町内で一、二の歴史を誇る老舗飲食店「味の八幸」(西1ノ6)を営む店主の山崎政宣さん(79)と妻秀子さん(81)が、高齢を理由に“後継者”を探している。「元気なうちに引退しようと思っている。誰かが店を買ってくれたらやめるけど、売れなきゃ100歳までやっているかも」と秀子さん。店舗は1月から売りに出しているが現時点で買い手はおらず、最近は「やめないで」と足を運ぶ客も増えている。
1972年創業で、リニューアルした83年に現店舗に。元漁師の政宣さんが広尾で水揚げした新鮮な海産物を調理し、定食などで振る舞う。特にハッカクの焼き魚や刺し身は同店が味を広めた名物料理。寡黙な政宣さんに対し、秀子さんが快活に来店者とおしゃべりして店の雰囲気を盛り上げ、遠方から足を運ぶ常連も多い。
店は1階に30人、2階は団体向けで60人まで収容できる。山崎さん夫婦と長女尚美さん(43)、従業員2人の5人で切り盛りするが「大人数に対応するのはきつい仕事になってきた」と政宣さん。新型コロナウイルスの感染が広がる前の昨年12月に家族で相談し、店が繁盛しているうちに別の人に引き継ぐことを決めた。1月からHARIMA不動産事業部(大樹)のホームページに、事業継承物件として店舗の情報を掲載している。
店名は、末広がりの「八」に「幸せ」を組み合わせ、縁起の良さを意識した。政宣さんは「店の名前やメニューなどは全く変えてもらって構わない。ただ、食事をした人がおいしいと感じる店であればいい」と後継者に期待する。
最近は「いつやめるの?」と心配する客に、秀子さんが「あんたが店買ってよ。それまではいつまでもやるのさ」などと笑顔で返すやりとりが繰り広げられている。山崎さん夫婦は「後継者がいないままやめたら、広尾の飲食店がまた一つ減る。お客さんにそんな不自由な思いはさせたくない。引き継ぐまでは今まで以上のおもてなしを続けたい」と話している。
営業時間は午前11時~午後9時。日曜定休。問い合わせは同店(01558・2・3737)へ。(松村智裕)