アイホケ平野裕志朗 米国リーグのコロナ中断で帰国、来季へ力蓄える
世界最高峰のプロアイスホッケーリーグ、NHL(ナショナルホッケーリーグ)でのプレーを目指す日本代表FWの平野裕志朗(24)=白樺学園高出=が、米国の新型コロナウイルス感染拡大によるECHL(イーストコーストホッケーリーグ)のシーズン打ち切りに伴い3月に帰国、現在実家のある札幌市に戻った。練習場所の閉鎖などで体を動かすことがままならない状況だが、思いがけず空いた時間を有効利用し、SNSを通じて海外経験を発信し、若い選手への将来の選択肢を広げたり、ジムトレーナーとしてアイスホッケー競技に特化した指導をしたりしながら、来季の契約まで力を蓄える。(岡部彰広)
今季は不完全燃焼に終わった。シーズンは全72試合あったが、コロナ禍でまず3月13日にNHLが中断を発表し、その後2部相当のAHL(アメリカンホッケーリーグ)、3部相当のECHLと順に波及。ECHLはシーズン打ち切りが決まった。移動も困難になりそうなことから、平野は同19日に帰国した。「向こうにいた時はチームがあるウェストバージニア州には1人も感染者がいなかった。帰国してから一気に増えた」
もやもや感が残る出来事はほかにもあった。平野はECHLのウィーリング・ネイラーズで52試合に出場し、13ゴール22アシスト。試合数の割合を考えてもその前のシーズンの19ゴール38アシストから減ったが、これはけがと五輪予選出場でチームを離れたためだった。
けがはアウェー戦で相手選手に狙われて左大腿(だいたい)部を負傷、完治するまで1月半かかる重傷で思ったようなパフォーマンスができなかった。また日本代表としては、あと1勝で五輪最終予選に進むところで敗れ、6大会連続で出場を逃した。「勝利へと流れを変える影響力がまだない。圧倒的な力を見せられるプレーヤーじゃなかったという悔しさが残った」。歯がゆさばかりが募った。
メンタル的にまだ
昨年は出場できたAHLのウィルクスバリ・スクラントン・ペンギンズに一度もコールアップ(昇格)されなかったことも、つらい出来事だった。「開幕から7試合連続ポイントを挙げ、一段階上のプレーができていると思っていた。監督からもコールアップされると言われていた」。しかしふたを開けてみれば、上がったのはワンウエー契約と呼ばれる平野より契約内容が上の選手。さらにその時点からポイントの量産ペースが鈍った。「自分では何とも思っていなかったはずだったが、振り返ってみればメンタル的に何かがあったんだと思う。でもそういうところがまだまだっていうことですよね」。反省ばかりが残った。
チーム変更も視野
来季はAHLでの出場固定を目標に、契約チーム変更も視野に入れている。ただ現在は先が見通せない状況のため、自身の経験を情報提供しながら自己研さんしつつ、その機会を待つことを考えている。
その一つとして平野はユーチューブなどで6年の海外経験でつかんだものを伝えることを挙げた。「(契約までの)限られた時間ではあるが、この期間を価値のあるものにしたい。発想力がすごい子どもたちに自分の考えや競技の魅力を知ってもらい、将来の選択肢を増やしてもらえれば」。かねて口に出している日本ホッケーの盛り上げ役を買うとともに、自身の新たな道筋もしっかり切り開いていく。