広尾沖で活断層を確認 光地園断層長さ倍で地震規模も大きく 道総研調査
直下型地震を起こす可能性がある活断層で、大樹-広尾間の陸域26キロで確認されている「光地園断層」が、広尾沖の海域(海底)に約33キロ延伸していると推定されることが、道立総合研究機構地質研究所などの調査で分かった。陸域と海域を合わせると全長は従来の倍以上の約58キロになり、想定される地震の最大規模も約8倍大きくなる。今後、国の地震評価も見直される見通しで、地域の防災計画にも影響を与えそうだ。(デジタル編集部=小林祐己)
同研究所の沿岸地質グループ(小樽市)と国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)が、2018年度に広尾沖で海域活断層調査を実施。船舶を使って、海底の状況を調べる「音波探査」と、実際に海底下の地層を採取する「柱状採泥(さいでい)」を行った。
結果、十勝港沖の海底で北北西から南南東に延びる地層のずれを複数確認した。同海域では過去にも音波探査で地層の変化が確認されていたが、今回の調査でずれが複数回にわたって累積的に確認されたことから「活断層」と判定された。十勝沖で活断層の存在が判明したのは初めて。
海域の活断層は沖合33キロまで確認された。陸域の海岸部や十勝港内が未調査のため、光地園断層と海域活断層が続いていることは「推定」となるが、調査を実施した道総研地質研究所の内田康人研究主幹は「これだけ近い陸と海でほぼ延長線上にあれば、連続した活断層と見なしてよい」と話す。
光地園断層は全体が一つの区間として活動する場合、マグニチュード(M)7・2程度の地震が発生する可能性があるとされ、一部地域で最大震度7も予測されている。全長が倍以上となると、想定されるMは7・8と大きくなる。
Mは0・6増えると地震の規模は約8倍になり、より大きな被害の可能性も出てくる。地震による1回のずれの量も、従来評価では約3メートルとされていたが、今回の調査結果では最大で6・5~7・5メートルと大きく推計された。
最新活動1万2500年前より前
また今回の調査では、断層の最新(直近)の活動が約1万2500年前~約4万7000年前にあったことが推定された。光地園断層の活動は約2万1000年前以後と推定されていたが、活動時期は特定されていなかった。
今回は約1万2500年前より新しい「沖積層」に地層変化がないことが分かり、この年代の間に地震が起きていないことが確認された。地震を示す断層のずれはさらに古い「後期更新世」の地層で確認された。さらに古い活動は、13万年前以内に少なくとも2回あったことも推計された。
道による光地園断層の過去の調査では、約2000年前に活動を疑われる地層変化が報告されていた。今回、1万2500年前より新しい時代に活動がなかったことが分かり、内田主幹は「沖積層に変化がなく、活動がなかったと言えたことは大きな成果」とする。
国の評価による光地園断層の地震発生確率は「30年以内に0・1~0・4%」で「主な活断層の中ではやや高いグループに属する」とされる。ただ、最新活動時期が特定されていなかったため、「信頼度は低い」と記されていた。
今回の調査結果はすでに政府の地震本部に報告されており、今後の評価見直しに反映される見通し。道総研は年内にも、今回の結果について、広尾町や調査に協力した広尾漁協などに説明する予定。
内田主幹は「陸域、海域でひとつながりの活断層と考えられ、活動した場合の想定マグニチュードも大きいと予想している。切迫しているとは言えないが、これまでの想定震度より大きい揺れが来ると考え、地域の防災計画などに反映してほしい」と話している。