アイヌ文化を五輪で伝えたい 開会式で披露目指して舞踊練習
2020年東京オリンピック・パラリンピックの開会式でアイヌ古式舞踊を披露し、民族文化の発信を目指す取り組みが進んでいる。関係者は「平和の祭典で、アイヌ民族の世界観が平和主義と合致していることを表現できたら」と期待し、数百~1000人規模の群舞を想定した舞の練習に励んでいる。
オリンピック・パラリンピックへの参加は道や北海道アイヌ協会(札幌)が要請している。バンクーバー大会(10年)やリオデジャネイロ大会(16年)では開会式に先住民族が登場。東京の開会式の出演者などはまだ正式決定していない段階だが、協会が主体となり、披露する踊りの練習を1年ほど前から始めている。
踊りは地域で異なるため、今回のために統一した踊りを各地で練習。踊りを広める「サブリーダー」の29人が、月に1度、各地を巡って練習を重ねている。十勝関係者では帯広カムイトウウポポ保存会の酒井真理さん、来年4月に開設される国立施設「民族共生象徴空間」(愛称ウポポイ、胆振管内白老町)を運営するアイヌ民族文化財団職員で帯広出身の荒田裕樹さんら3人が選ばれている。
15日は帯広で初めて練習が行われ、市内の生活館で「エムシリムセ(剣の舞)」などの舞踊に男女分かれて臨んだ。今回の目的はサブリーダーが「教え方(コーチング)」を学ぶこと。アイヌ民族は幼い頃から年配者の踊りを見て習得してきた歴史があり、教えることはサブリーダーたちにとっても経験が少ない。この日はリズムの取り方や動きなど一つひとつを丁寧に指導し、参加者も楽しみながら練習に臨んだ。
練習には、今回の統一した踊りの演出を担当する舞踊家秋辺デボさん(釧路市)も立ち会った。秋辺さんはカムイトウウポポ保存会の創設者の一人、加藤ナミエさんの孫。開会式出場への期待を込め、「五輪は世界一の祭典で、国内外にアイヌ民族の精神を伝えられる。アートを通じて平和を伝え、結果的に民族への理解につながれば」と思いを語った。
(松田亜弓)