古代小麦でパン 清水の農家佐藤さんとはるこまベーカリー
【清水】町羽帯の畑作農家佐藤裕一さん(32)が、道内でも珍しい「古代小麦」の栽培に取り組んでいる。今年、一定の収量を確保することができ、帯広市内の「はるこまベーカリー」(西19南5)が食パンとして商品化した。佐藤さんは「作付面積を増やし輪作体系に組み込みたい」と意欲を見せている。
古代小麦は風味や栄養価の高さから近年、健康志向の愛好者が増えている。佐藤さんが栽培しているのは古代小麦の中でもポピュラーな「スペルト小麦」。滋賀県の栽培農家から種を提供してもらい、2015年秋に10アールで作付けした。昨年8月は天候不順で不作となり、1ヘクタールに増やして再挑戦。今年は3トンを収穫した。
佐藤さんは40ヘクタールで麦、ジャガイモ、ビート、豆類を栽培する典型的な十勝の畑作農家。麦の差別化に余念がなく、一部で根強いニーズがある「ホクシン」を主力にしている。環太平洋連携協定(TPP)の進展で先行きに不安を感じ、生き残りを模索する中で古代小麦にたどりついた。
収量が低いため一般の小麦(国産)と比べて倍の価格。はるこまベーカリーを経営する栗原民也さん(56)は佐藤さんから売り込みがあった際、商品化は難しいと考えたが、体質の問題でパンを食べられない知人に試作品を提供したところ「おいしい」と反応も良く、商品化の価値はあると判断した。
水曜限定で販売する古代小麦の食パンは1斤(350グラム、税別500円)と半斤の2種類。毎回、15本程度を用意する。風味を生かすため、バター、砂糖、塩などの添加物を減らしているのも特徴だ。
「スペルト小麦のパンを食べた時の風味に驚き、これを広めたいと思った。北海道に生産農家がいることを知ってもらいたい」と佐藤さん。今秋は4ヘクタールで作付けし、ゆくゆくは8ヘクタールにまで増やす考え。
栗原さんは「十勝では(古代小麦パンの)テストケースになる。パンが好きなのに食べられないという人に、まずは試してもらいたい」と話している。パンの問い合わせは、はるこまベーカリー(0155・38・5311)へ。
(能勢雄太郎)
普通小麦の原種に当たる穀物。収量が低く、製粉歩留まりも悪いため多収の麦に切り替わった。皮殻が硬いため、病害虫に比較的強い。低農薬栽培などに向いている。国内で流通しているのは外国産がほとんど。小麦アレルギーを発症しにくいと伝えられているが科学的な検証はされておらず、グルテンフリーでもない。