「安心して漁できない」 北ミサイルで漁業者も不安
【広尾】北朝鮮のミサイルが付近上空を通過した広尾町では、早朝から各家庭に発射を伝えるサイレンが町内に鳴り響いた。米領グアム島周辺への発射計画が発表されていたため、不意の北海道方向への発射に町民からは驚きと不安の声が聞かれ、秋サケ漁開始を30日に控える漁業者からは、安心して漁ができるよう国に対応を求める声が上がった。
町内では午前6時2分と同14分の2度、ミサイル発射と日本通過を伝える全国瞬時警報システム(Jアラート)と連動し、各世帯の防災行政無線と屋外拡声器からサイレンが鳴り響いた。
携帯電話に届いた緊急のエリアメールで目が覚め、防災無線を聞いたという辻田廣行さん(65)は「どこかには飛ばすだろうと思ったが、まさか北海道に飛ばすとは。このまま国の関係に進展が進まなかったら、またミサイルを撃つのではないか」と不安がった。
役場では国民保護計画で定めた担当職員のほか自主的に出勤した管理職など約20人が午前6時15分ごろから続々と集まり、テレビやインターネットのニュースで飛行経路を確認し、被害状況の確認作業を行った。
村瀬優町長は「北海道がミサイルの飛行区域に入り驚いた。広尾はこれから多くの魚種の漁期を迎えるので心配。同じようなことがあれば今後も情報収集に努め、迅速に住民に周知したい」と話した。
十勝港では30日からの秋サケ漁に向け、定置網設置に向けた準備が進んでいる。今回の発射では管内漁業に直接の影響はなかったが、ある漁業者の男性(43)は「ミサイル発射で漁ができなくなると困る。いい迷惑だ」と憤る。
Jアラートが鳴ったときに沖合で網設置の手順を確認していた別の男性(53)は、安全のため作業をやめて一度十勝港に避難した。「四国の方に飛ばすと思っていたのでJアラートを聞いたときは不安だった。日本としても、もう少し対策を取ってもらわないと安心して漁ができない」と不満を口にした。