現場奔走、復旧に尽力 被災西部３町長
【新得・清水・芽室】台風１０号の大雨災害で、十勝毎日新聞社は８日までに、住民生活に大きな被害が出た新得と清水、芽室の３町長にインタビューした。陣頭指揮を執る各町長は、復旧に全力を尽くすとした上で、課題などについて語った。
台風１０号による大雨で大きな被害が出た新得、清水、芽室の３町。過去に例がない規模の大災害の爪痕は深く、まちが元の姿を取り戻すにはまだ時間を要する。陣頭指揮を執る３町長の思いを聞いた。
新得 浜田正利町長
一刻も早く普通の生活に戻す
一刻も早く町民が普通の生活に戻れるよう、被災者に寄り添いスピード感を持った対応をしていかなければならない。
被害の中で一番心を痛めているのは亡くなった方がいること。防げなかったのかという思いが強くある。家屋の流失を含めて床上・床下浸水、財産を失った人もいる。全ての被害の把握に努めることと並行し、生活に関わる箇所から最優先に復旧を進めていく。
台風で続いた大雨で、水道が通常のきれいな新得の水より若干色が付いたように感じていた。風呂に水をためていたので個人的にはほんの少しの間だけトイレの水などを確保できた。ただ、ここまで大きな災害が起きるとは、きっと誰もが想像できなかったと思う。
われわれは町民の安全安心を守っていく立場。初期対応を含め、今と今後の対応について検証し、次に備えていく必要がある。例えば、災害対策本部がある役場庁舎に貯水槽がないことも今回浮き彫りになった課題の一つ。どこかで取り付けなければならない。
長く日常と違う生活が続くと、ストレスが蓄積していく。町民全体の健康不安や被害、経済的問題もついてくる。行政でできる範囲の支援に気を使っていく。われわれがやる復旧に対する支援を求めたい。法律には複雑なルールがあるが、天災は国民全体で応援していこうと考えた上で、国も道も対応してもらいたい。（小寺泰介）
清水 高薄渡町長
上流の砂防ダム、森林整備を
災害に強い町と自負していて、（ペケレベツ川の氾濫で）役場の前が川になるなど夢にも想像しなかった。１９６１年と８１年にも氾濫したが、ここまで街中に水が入ってきた記憶はない。
河川が増水し、人命を最優先に一刻も早い避難を第一に考えた。川の流れを食い止める方法はないかと、私自身も現場を走り回った。
台風１０号の前に大雨が相次ぎ、上流にある木などが流された。幅が１００メートルほど広がった河川もあり、（行方不明者が出た）久山川を含め、保水能力が限界だった可能性がある。国や道と協議しながら、川の上流にある森林や砂防ダム整備などの対策を強く求めていきたい。
水源地や浄水場、送水管が駄目になり、これだけ長期間の断水になるのは想定していなかった。近隣町村の給水応援をもらった他、町水道職員ＯＢの技術支援を受け、早期に送水できるめどが立った。酪農・畜産の町として、農業用水を供給できないのが残念。一刻も早く通水できるよう最大限の努力をしたい。町道は３１路線が通行止めで、１７カ所の橋が壊れた。緊急度の高い所から整備しないといけない。
災害直後は通信環境が悪く現場職員と連絡が取れず、情報収集に時間がかかった。初めての経験で指揮命令や情報発信、行方不明者への対応など職員が動揺した部分もあった。防災専門部署の設置を検討したい。（池谷智仁）
芽室 宮西義憲町長
構造物の基準値見直し必要
４つの河川地域で避難指示と避難勧告を出した。芽室川が決壊して床上浸水が生じ、自衛隊の出動を要請し２１２人の方をボートで救助した。避難所は１０カ所開設し、最大１１１７人が避難した。
３河川が氾濫した。上美生地域の農地の崩壊が大きく、４つの橋梁（きょうりょう）が崩落した。小規模な土砂崩壊は１０カ所くらいある。市街地の断水は翌日復旧したが、農村部は８０世帯で営農用水が断水したままになっている。緊急対策で、ファームポンドまで水を運んだり、他の町村の手助けもいただきながら対応している。
芽室は美生川、十勝川、芽室川に三方囲まれ、芽室川と美生川の間にピウカ川が流れている。今まで大きな水害はなかったが、今回は極めて異常な状況で、４河川の水位の観測を継続していた。非常に厳しかったのは、夜間の避難指示にならざるを得ない状況だったこと。
町民の生活の回復に全力を挙げようというのが共通目標。精神的な問題にも寄り添いながら復旧に当たっていく。次の段階として農業被害、農業関連の事業所も含めた実態調査をし、支援を推進していく。来週からＪＡと協調し、調査も始める。
予想できない局地災害が起こっている。構造物の基準値について、地方も都道府県も国も、見直しに入る時期にきていると思っている。（澤村真理子）
