宿泊客とセッション 新得のとほ宿「ドラム館」
【新得】町内に宿泊客と宿のオーナー兄弟がセッションを楽しむ「とほ宿」がある。「ドラム館」(町屈足南町20)だ。今夏も全国から大勢の旅行者が“泊まれる音楽スタジオ”を訪れ、室内に所狭しと置かれた多彩な楽器を自由に鳴らしている。
経営するのは大阪府出身の沢村さん兄弟。24年前にオープンした。宿泊客から「おっさん」の愛称で親しまれている昭治さん(60)が、「あにやん」こと兄の雅之さん(62)と共同で運営している。バイクで北海道旅行をしていた昭治さんが、清水町美蔓から望む雄大な風景に魅せられ、新得町屈足を拠点とした。ドラム館の名前は、母親のツルエさん(故人)が名付けた。とほ宿は、一人旅でも気軽に泊まることができるアットホームな宿だ。
食堂兼リビングにはエレキギターやフォークギターが8本、アンプが6台、キーボードやフルートなども置かれ、音楽スタジオさながらの光景だ。自分の楽器を置いていく旅行者も多い。1993年から毎年、夏と冬に来て5日間滞在する常連客の加藤正和さん(55)=福島県=は「ここには40数回来ている。居心地が良い。生演奏ができて、ダジャレ連発の面白い2人が好き」と話す。
初めて顔を合わせる宿泊客に沢村さん兄弟も加わった酒宴が一段落すると、毎晩セッションが始まる。昭治さんはドラムに向かい、雅之さんもギターを抱える。宿泊客も数人が加わり「ベンチャーズメドレー」でノリノリのスタート。いつの間にか楽器を使えない他の宿泊客もタンバリンやカホンで参加し、不思議な一体感が生まれる。
「旅人との出会いは無形の財産。ライブ演奏をみんなですることで、宿泊客との距離も一気に縮まる」と話す2人。熱いセッションは連日続く。
料金は素泊まり3500円、2食付5000円。問い合わせはドラム館(0156・65・3664)へ。
(佐々木健通信員)