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3年間不妊のばん馬が出産 初の卵管通水法で

卵管通水法の治療を受けた「ホクショウマドンナ」(奥)から生まれ、元気に走り回る子馬の「沙織」(手前)と笠井さん

 【音更】町西中音更北14の笠井農場で、3年間全く妊娠しなかったばん馬が「卵管通水法」の治療を受けて受胎に成功し、5月に元気な子馬を出産した。内視鏡を使い、卵管の詰まりを解消する治療で、ばん馬に行われたのは初めて。生産頭数減が続くばん馬の新たな不妊治療の事例ともなり、同農場の笠井俊宏さん(34)は「周りの人たちの協力のおかげ」と喜び、子馬の成長を見守っている。

 出産したのはばんえい競馬の競走馬としても活躍した「ホクショウマドンナ」(10歳)。同競馬が好きな笠井さんが4年前に購入し、交配を続けたが、3年連続で妊娠しなかった。

 「何とか子どもを産ませたい」。笠井さんは、帯広畜産大学で馬の繁殖法を研究する南保泰雄教授(47)に相談するも原因は不明。JRA競走馬総合研究所の元職員の南保教授は、当時からの知り合いで卵管通水法を開発した日高の診療所「イノウエ・ホース・クリニック」の井上裕士院長(53)に協力を求めた。

 治療は昨春に実施し、無事に成功。これまではサラブレッドのみでばん馬の治療は初めてだったため、井上院長は「ばん馬は子宮が大きいため、内視鏡の長さが足りるか心配だったがスムーズにできた」と振り返る。その後、2度の交配で見事に受胎し、5月14日に出産した。南保教授は「ばんえい競馬の生産頭数が減少している現状で、生産性向上のための良い事例となった」と成果を語る。

 種馬は名馬「ナリタボブサップ」。「沙織」と名付けた子馬は黒毛に生え替わり、徐々に親の面影が出ている。笠井さんは「不妊が続くと馬を売却したり、食肉にする人もいるが、ペットのように好きだし、簡単には手放せなかった。血統が良いので、いつか競走馬としてデビューできれば」と話している。
(高津祐也)

<卵管通水法>
 卵管子宮口からカテーテルを入れて生理食塩水を卵管に送る技術。人にも不妊検査で行われる方法だが、馬のケースは卵管子宮口の入り口がわずか0・5ミリと狭いため内視鏡を使って行う。「イノウエ・ホース・クリニック」の井上裕士院長が開発し、2013年に米国の学会で発表した。


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