秋田旅館「再生」 高齢者下宿に
かつて「秋田旅館」だった帯広市西1南3の建物の2階を改装し、同旅館創業者の孫の齊藤陽介さん(41)が介護サービス付き高齢者下宿「たきあ」をオープンさせた。齊藤さんは既に8年前、旅館閉業後の1階に鍼灸(しんきゅう)整骨院を開いており、今回で建物全体の活用を果たした。「旅館時代のにぎわいが戻りつつある」と笑顔で話している。
秋田旅館は齊藤さんの祖父が開業。その後、父の憲一さんと母の佳子さんが切り盛りしたが、憲一さんが脳梗塞で倒れた2004年頃に閉業した。順天堂大を卒業し、千葉で鍼灸(しんきゅう)整骨院を開いていた齊藤さんは父母が心配で08年に戻り、3階建ての同建物の1階を改修。「はなみずき鍼灸整骨院」を開業し、自らは3階部分に住んでいた。
2階は一部、貸し暗室として使用してきたが、鍼灸整骨院と連動させ、一体的に活用できる事業展開を模索。幼なじみで介護福祉士の三谷剛さんから「自宅でしてもらいたい介護を実践したい」と聞き、その思いに共鳴。建物は自ら所有しており、昨年から自己資金で改装工事を進め、三谷さんをサービス提供責任者に招いて4月、「たきあ」をオープンさせた。
齊藤さん自身、介護の世界は未知だったが、介護職員初任者研修を受け、鍼灸整骨の仕事と並行し自ら夜勤なども担当する。旅館時代に料理担当だった母の佳子さんが食事作りを担う。憲一さんは入院中だが、三谷さんの子どもに加え、7歳を筆頭に3人いる齊藤さんの子も行き来し、「入居者を含め大家族のような環境」(齊藤さん)の中で毎日を過ごしている。
高齢者下宿は最大8人の入居で、既に半数ほどが埋まった。齊藤さんは「『たきあ』という名称は、秋田旅館の雰囲気を残したくて付けた。施設はスプリンクラーなど防災や人員の法的基準を満たしている。歴史ある旅館をようやく完全に再生できた」と話す。
料金は、要介護3で自己負担1割の場合、各種サービス料を入れて月額11万円程度という。問い合わせは0155・66・4255へ。(佐藤いづみ)