札幌の桐越さん、昔のおもちゃ寄贈 新得で一般公開模索
【新得】街頭紙芝居師として活動している札幌市内の桐越陽一さん(77)が、個人で収集していた昭和時代を中心とした昔のおもちゃや雑貨、カメラ、SPレコードなどをそっくりそのまま新得町内の知人の佐々木健さん(62)に無償で譲った。おもちゃなどは現在、ハプセブンショッピングセンター(本通南2)内の旧印刷の文遊舘内に仮展示しており、管理、運営方法などを検討している。
桐越さんは、25年ほど前に東京で正統派紙芝居師として活動していた故森下正雄さんの「黄金バット」を見て感激。森下さんに師事し、紙芝居師となった。「路地裏芸を楽しむ会」の代表として札幌市内の北海道開拓の村などで自転車の荷台にくくりつけた演台を使い、戦後間もない頃のスタイルの紙芝居を披露し続けている。
昔の紙芝居師は、水あめのほか、おもちゃやノート、雑貨なども販売していたことから、「下町の世界観を大切にしたい」と昔のおもちゃなどの収集も始め、自宅の敷地内にプレハブを建設。1階を大道芸を学ぶ仲間の練習場、2階はおもちゃなどの展示場としてきた。
しかし、プレハブを撤去しなければならない事情が生じ、展示物の行き場所を探していたところ、それを知った佐々木さんは町郷土研究会の有志に相談し、「新得の街中の活性化に活用できるのではないか」と受け入れを打診。桐越さんは「佐々木さんには将来的に紙芝居師として活動してもらいたい。『新得支部』の拠点になれば」と快諾。佐々木さんらは昨年8月に展示物を引き取った。
佐々木さんらが展示会場を探していたところ、旧文遊舘の施設を所有者の好意で借りることができ、同10月ごろから展示の作業を行ってきた。
展示ケースの中にはブリキの車や電車、人形などのおもちゃをはじめ、ラジコン、パッチ、すごろく、SPレコード、カメラなどが数え切れないほどの“お宝”が並ぶ。さらに、他の資料館に貸し出しているソフトビニール人形や幻灯機、8ミリ映写機とフィルムなども貸出期間が過ぎれば新得に届くことになっている。
町民や観光客が買い物のついでにふらりと立ち寄れる場所としての開放を考えているが、管理や運営面の課題が残っており、現時点では一般公開の見通しはたっていない。佐々木さんは「貴重なおもちゃや資料をまちづくりに生かしたい」とし、さらに有志を募って常設展示を目指す。(大野篤志)