幕別町出身の谷沿さん イギリスの石積み技術の資格取得
【幕別】町内で造園業を営む谷沿(たにぞえ)裕紀さん(33)が、英国伝統の石積み技術「ドライストーンウォーリング」の資格を取得した。関係者によると、道内では初めて。谷沿さんは「地元の石を積み上げた建造物を、地域の人たちが集まる場所に造りたい」と夢を広げている。
谷沿さんは幕別出身。札幌光星高校卒。2012年に岩手県に渡り、現地の造園会社に勤めながら、東日本大震災後の被災地支援活動に取り組んだ。昨年、幕別に戻り、現在は「庭や たにぞえ」(町札内暁町)を営んでいる。
ドライストーンウォーリングとは、セメントやモルタルなどの接着剤を使わず、天然の石をハンマー、のみだけで加工しながら積み上げていく英国の石積み技術。中央に重心を集めるため強度が高く、地震などへの耐性も強いという。
谷沿さんが資格を取ろうと思ったきっかけは、岩手で取り組んだ震災後のがれきの解体作業。コンクリートなど人工的に強度を高めた頑丈な建物が、津波にあっけなく流された事実を前に、衝撃を受けた。
資格試験は7時間の制限時間内に、もともとあった石壁を崩し、幅2メートル、高さ1・2メートルの範囲で再度積み上げるという内容。大小や長短さまざまな石を壁の強度を保つよう積むことが求められ、技術面や外見の美しさなどが採点の対象となる。谷沿さんは今年10月、英国北部のケンダルで試験に挑戦し、見事合格を果たした。
試験に向けては、十勝で今年出会った、天然の石だけで石積みを行う本州の著名な造園会社の職人に、教えを請いながら技術を磨いたという。
谷沿さんは「コンクリートではなく、天然の素材だけで丈夫な建造物を造りたい。石のある街並みを目指しながら、技術を後世まで伝えていきたい」と意欲を見せている。(安倍諒)