年内で閉店 芽室・ニジマスのたかはし養魚場 「お客さんに感謝」
【芽室】ニジマス・ヤマメの養殖・釣り堀と料理店を営む「たかはし養魚場」(町上美生)が、今月末で約40年の営業に幕を下ろす。澄んだ湧き水に恵まれ、代表の高橋博さん(74)と妻の美江子さん(70)は町内で唯一、自家採卵で養殖を続けてきたが、体力に限界を感じはじめ、閉店を決めた。高橋さん夫妻は「きれいな水を育んだ自然と、長く店を愛してくれたお客さんに深く感謝したい」と話している。
上美生の市街地を抜けて数分、車を走らせた小高い丘に養魚場の店舗がある。店の下には養殖池が並び、夏は釣り堀としてもにぎわう。店ではから揚げや塩焼きをはじめ、刺身や「あらい」を楽しめ、地域の会合などでも振る舞われた。
博さんの父・正吾さん(2004年死去)はもともと農業を営んでいた。上美生中を卒業した博さんは2年間農業を手伝った後、帯広や札幌の会社で勤務。1960年代に湧き水に着目して養殖を始めた正吾さんを手伝うため、札幌で出会った美江子さんと共に、74年に帰郷した。
店の自慢は澄んだ湧き水だ。自然が保たれている証(あか)しとされる希少なマメシジミが生息し、上美生の飲み水として使われるほど。しかし、豊かな自然ゆえに多くの動物が魚を食べてしまう被害も。ただ、博さんは「彼ら(動物)も食べていかなくちゃいけない」と割り切る。そして「自然に任せながらやってきたのが、長年続けられた理由かもしれない」と振り返る。
スコップで地道に掘り始めた養殖池は20を超え、かつては約10万匹を育てた時期もあった。ただ、採卵やふ化をはじめ、冬の寒い時期でも魚から目を離せない仕事。料理の提供はここ数年、予約制にとどめていた。
博さんは「生活するためにさばいてきたが、最近魚がいとおしく思える。その時にもう潮時かなと思った」と語る。「体が動かなくなってからやめたら迷惑をかける。元気なうちに整理をしたい」(美江子さん)との思いもあった。
飲食の提供は年内で終えるが、当面は養殖を続けていく予定。博さんは「これからも大好きな自然の中で暮らしていきたい」と話している。(深津慶太)