小麦大豊作、過去最高のJAも 「きたほなみ」本領発揮
十勝管内で収穫がほぼ終了した今年産の秋まき小麦の出来は、「豊作」となりそうだ。2011年産以降、主力品種が「きたほなみ」に転換して初めて、同品種の“本領発揮”となった。品質はまだ不明だが、収量は前の品種の「ホクシン」時代を含め、「過去最高」というJAもある。
芽室町の農家の男性(54)は「きたほなみがやっと本来の姿をみせてくれた。(乾燥状態で)昨年は10アール当たり10俵以下だったが、今年は12俵以上ある。多いところでは15俵という話も聞く」と話す。
更別村の農家(64)も「今までで最高の収量」と喜ぶ。品質は今後10月にかけ規格外のより分けなど「調製」することで判明するが、「実も太っていて質もよさそう」とみる。
十勝管内の小麦の多くはうどん用など中力品種で、2011年に「ホクシン」から「きたほなみ」に全面転換した。新品種は2割増収と期待されたが、昨年まで天候不順もあり、ホクシン時代の最高収量(02年)を超えられていなかった。
十勝中部のJAは「JAの小麦史上最高の収量になりそう」と期待する。十勝東部のJAも「(乾燥後で10アール当たり)平均13俵程度では。1トン(16・6俵)を超えたという生産者も何人かいる」と驚く。「受け入れに長蛇の列ができた」「新たに倉庫を借りないと収まらない」というJAや商社の声も聞こえる。
管内の小麦収穫は7月中旬に始まり、十勝総合振興局によると8月1日時点で9割以上終了した。
豊作傾向の要因は(1)春先にある程度雨が降って肥料が効いた(2)開花期の好天で受粉が順調だった(3)6月下旬~7月上旬に気温が低くゆっくり実が熟した-などが考えられる。収穫期も曇天や断続的な雨に見舞われたものの、品質低下など大きな影響は出ていない。
管内の小麦作付面積は約4万5000ヘクタールで畑作主要品目では最も割合が高く、小麦の出来は生産者の収入を大きく左右する。管内農家には明るい声も聞こえるが、音更町の畑作農家・津島朗さん(54)=指導農業士=は「過去最高で良かったと思った矢先にTPPで小麦が関税削減の対象になり、心配だ。小麦は物流、加工で経済効果も大きく、麦わらは牛の寝床となって畜産を支えるなど、役割は計り知れない」と話している。(眞尾敦)