世界一周施術の旅へ 鍼灸師の天野さん
帯広市内の東方鍼灸(しんきゅう)院(大通南21、吉川正子院長)に3月まで勤めていた鍼灸師の天野弘子さん(40)が、5月から豪華客船に乗船し、乗客に施術しながら世界を巡る旅に出る。同院で学んだ日本鍼灸の神髄を世界のセレブ相手に広めようと意気込んでいる。
天野さんは札幌出身。札幌大学を卒業後、ワーキングホリデー制度を使ってカナダに長期滞在した経験がある。前職の旅行添乗員時代にも各国を訪れた。2009年から東洋鍼灸専門学校(東京)で学び、12年11月から同院で腕を磨いた。
同学院に通っていた時期に客船で活躍する鍼灸師の存在を専門誌で知り、旅行が好きだったこともあって「いつかは自分も」と夢を持っていた。鍼灸師を客船に派遣しているのは、世界中の高級ホテルや客船内でエステなどを展開する英国スタイナー社。現在、160隻と提携してエステ、フィットネスクラブ、ネイルサロン、美容室などを展開。鍼灸師も100人ほどが活躍しているという。
今年2月に東京で1次面接を受け、その後、米国の鍼灸師からスカイプ(ネット電話)を使って技術面を問われる2次面接を受けた。具体的な症状に対する施術方法を聞かれ、同院で学んだことを答えたところ、面接官が戸惑ったという。吉川院長は「痛いところに鍼を刺すのではなく、根本の内臓とのつながりを重視して小さい鍼を置くだけという当院の手法を理解できなかったのでは」と話す。その後、天野さんの元に採用通知が届いた。
船内では生活費は掛からないものの、給与は完全歩合制。船内で自らセミナーなどを開き、客を開拓するところからが仕事だ。天野さんは「限られた空間なので評判が広がるのも早い半面、悪いうわさが広がるのも早い」と気を引き締めながらも、「東方鍼灸院の施術は、一度受けてもらえれば体の変化をすぐに見せられるので、外国の方にも素晴らしさが伝わるはず」と自信をのぞかせる。
乗船期間は7カ月。船や航路は決まっていないが、天野さんは「どこでも行ってみたい。ここで学んだ鍼灸をいろいろな国の人に伝えたい」と力を込める。吉川院長は「帯広まで来る外国人は少ないので、うちの治療方法を世界に広めてきて」とエールを送る。(丹羽恭太)