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泌乳牛の飼料自給率を向上させるための牧草サイレージの繊維消化性

道総研 酪農試験場 酪農研究部 乳牛グループ
道総研 畜産試験場 畜産研究部 飼料生産技術グループ

1.試験のねらい
 北海道の酪農経営における飼料自給率は50%(可消化養分総量(TDN)ベース)と低い。泌乳牛の摂取量の高い牧草サイレージ(GS)の利用は自給率の向上と購入飼料の低減に有効である。GSの摂取量を制限する主要な要因は、中性デタージェント繊維(aNDFom)含量と繊維消化性である。近年、繊維消化性の新たな指標として不消化NDF(uNDF)が提示された。
 本研究では、GSの繊維消化性と泌乳牛の摂取量の関係、および草種や番草の異なるGSの繊維消化性の特徴を示し、GS由来の栄養摂取量が高く、飼料自給率を高められる条件を提示する。

2.試験の方法
1)GS12処理(草種2(オーチャードグラス(OG),チモシー(TY))×番草1~3×2ヶ年)を、細断型ロールベールで調製し、ホルスタイン種経産牛4頭/処理による17日間の飼養試験を実施し、GSのaNDFom含量および繊維消化性とGS由来の栄養摂取量の関係を明らかにした。調査項目は、発酵品質、飼料成分、繊維消化性(uNDF12,30,120,240(ルーメン液12,30,120,240時間培養後の不消化NDF),消化速度)、摂取量、乳量、乳成分、体重、ルーメン液性状とした。
2)草種、番草の異なるGS原料草31処理(草種2(OG,TY)×番草1~4×生育期または再生日数2~3×2ヶ年)を用い、飼料成分および繊維消化性を測定し、収穫条件の異なるイネ科牧草の繊維消化性の特徴を整理した。

3.成果の概要
1)GSのaNDFomおよびuNDF240含量が低いほど、体重当たりのGS摂取量およびGS由来のTDN摂取量は高かった(図1)。uNDF240含量はGS摂取量と強い負の相関があり、草種や番草の異なるGSの摂取量を評価するのに有効な指標であった。GSのuNDF240含量が1ポイント低下すると、体重当たりのGS摂取量は0.04ポイント、GS由来のTDN摂取量は0.05ポイント高まる関係にある。GS摂取量およびGS由来のTDN摂取量はuNDF30含量とも強い負の相関があったが、NDF消化速度との関係は明確でなかった。
 日乳量30kg以上(乳量水準9,000kg)の泌乳牛において、aNDFom含量55%未満またはuNDF240含量10%未満のGS(No.1~6)を用いると、体重当りのGS摂取量は約2%、GS由来のTDN摂取量は1.4%以上と高かった(表1)。このとき、飼料中のGS割合は60%以上であり、飼料自給率は56~64%となった。
2)TY極早生または早生品種の1番草では穂ばらみ期、OG中生品種の1番草では出穂期までに収穫することで、aNDFom含量55%未満、またはuNDF240含量10%未満のGS調製が可能な原料草が得られる可能性が高いと考えられた(表2)。3番草は2番草からの刈取間隔が短い場合は、上記の条件を満たすことができるが、刈取間隔が長くなるとuNDF240含量が10%以上となることが示唆された(データ略)。

4.留意点
1)牧草サイレージの収穫・調製に当たっては慣行的なサイレージ調製条件を遵守する。
2)チモシーは出穂前に収穫すると植生悪化の可能性が高いので留意する。





詳しい内容については下記にお問い合わせください
道総研酪農試験場 酪農研究部 乳牛グループ 谷川珠子
電話 0153-72-2004 FAX 0153-72-5329
E-mail tanigawa-tamako@hro.or.jp

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