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青い光でマメシンクイガから大豆を守る!

道総研 中央農業試験場 病虫部 病害虫グループ 
道総研 道南農業試験場 研究部 作物病虫グループ

1.背景と目的
 現在需要が高まっている有機栽培大豆は輪作体系や除草法が確立されつつあるが、大豆子実を加害するマメシンクイガ(以下シンクイと略)の防除手段がなく栽培の障害となっている。近年LEDの普及により害虫の光防除が注目されているが、本研究ではシンクイの光に対する反応について解明し、これを利用した光防除法を示した。

2.試験の方法
1)シンクイの光応答反応の解明
  シンクイ成虫の基本的な行動リズムとその形成に影響を与える要因を解明する。
2)照射によるシンクイ被害抑制効果と照射方法の検討
  防除に適したLEDの波長や設置方法、期間などを検討する。品種「トヨムスメ」(一部「ユキホマレ」)。
3)導入リスクおよび収益性の検討 
  照射による大豆生育および収量への影響、他種害虫(カメムシ類、シンクイ以外の鱗翅目害虫)による加害のリスク、無処理との粗収入の差を明らかにする。品種「トヨムスメ」。

3.成果の概要
1)シンクイ成虫は明-暗が切替わる直前~直後に活発になる行動リズムを示した。この行動リズムは主に明-暗が切替わる刺激により形成されると考えられ、常に明るい条件下ではリズムを失い活動量も低下した(図1)。
2)波長が短い青色LED(448~458nm;濃い青)を大豆圃場の外側に設置し15:00前後~翌7:00に終夜照射したところ、シンクイ被害が抑制された(図2)。およそ照度1ルクス(満月の夜よりやや明るく、夜の住宅街よりは暗い)以上の地点において効果が高かったが、照射圃場内であれば1ルクスより照度が低い圃場中心部などであっても無処理区と比較して被害が抑制される傾向があった。なお、長波長の青色LED(468nm;薄い青)や、黄、緑色LEDの照射では高照度でも防除効果が認められなかった(図2)。室内試験や圃場における調査結果から、青色LED照射の効果はシンクイ成虫の飛び込み抑制によるところが大きいと推察された。
3-1)大豆の開花期から照射を行ったところ茎の長さが短くなり、莢数が減少するなどして大幅に減収した。一方で、開花期1週間後以降から照射開始したところ影響が認められなかった。照度5ルクス未満で照射した区画では成熟程度(図3)や収量に影響がなかった。5~10ルクスでは成熟がやや遅れたが、一般的な収穫時期である10月中旬頃には無処理とほぼ同等の成熟程度に達した。
3-2)照射がカメムシ類や他の鱗翅目害虫による子実の被害を助長することはなかった。
3-3)青色LED導入圃場では規格内収量(加害されていない子実など)の増加に伴い粗収入が向上し無処理を上回った。シンクイ発生量が多い圃場ほどその差が大きかった(表1)。
4)大豆圃場における青色LED設置方法を以下に示す;ピーク波長450nm前後の青色LEDを、大豆の開花期1週間後以降のシンクイ成虫発生前(7月下旬頃)~8月末頃に、毎日夕方~翌朝(15:00頃~翌7:00)終夜照射する。照度およそ1~10ルクスで照らすことができる高さ、角度および間隔で設置する。シンクイ成虫の飛び込みを抑制するため、特に圃場の外縁が照度不足にならないよう注意する。開花期からの照射では大豆収量が減少するため注意する。

4.留意点
1)本成果は有機栽培、特別栽培大豆圃場のマメシンクイガ防除に活用する。
2)本研究では市販の電飾用LEDを用いた。今後、コスト、性能等を考慮した専用LEDの開発を実施予定である。
3)照射の効果は成虫の飛び込み抑制によると考えられることから、大豆連作圃場では利用しない。






詳しい内容については、次に問い合わせください。
道総研中央農業試験場 病虫部 病害虫グループ
電話(0123)89-2001 E-mail:central-agri@hro.or.jp

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