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砂地でも太く。ねぎの窒素施肥

道総研 農業研究本部・企画調整部(原子力環境センター駐在)

1.背景と目的
 ねぎは出荷規格に応じた単価で取引され、生産物の重量あたり単価はL>2L>M>Sとなる場合が多い。一方で、生産現場ではねぎの生育が小さく生産物はM規格が多いなど、期待するL規格収量が得られず収益が伸びない場合が少なくない。そのため、高単価規格の収穫比率を向上させる技術が求められている。本課題では、ねぎの高単価規格の収穫比率を向上させるため、適切な緩効性窒素肥料の苗箱施用および本圃の窒素施肥量の効果を明らかにする。

2.試験の方法
1)ねぎに及ぼす窒素施肥技術の検討と実証
 ねらい:高単価規格の収穫比率を高めるための緩効性窒素肥料の施用効果ならびに適正な窒素施肥量を明らかにする。
 試験方法:供試圃場は場内砂壌土圃場(低地土に砂質土を30cm客土、熱水抽出性窒素0.8~1.0mg/100g、窒素肥沃度水準Ⅰ、CEC10me/100g)、現地砂土圃場(同2.7mg/100g、同水準Ⅰ、同11me/100g)。栽植密度は40本/m(2本/株×株間5cm、CP303使用)とした。苗箱施肥は緩効性肥料ハイパーCDU細粒2を利用し、苗箱あたり88g/冊、定植後圃場換算2kgN/10aとした。調製ならびに収量調査における規格区分は現地生産組合基準とした。

3.成果の概要
1)高単価規格の収穫比率の向上は1本重の斉一化では難しく、1本重の平均を増加させ、M以下区分の減少を図ることが妥当であった(データ略)。
2)場内における窒素施肥量試験の結果、規格内収量は2021年9月どりの1作期を除き施肥ガイドが示す基準収量4,000kg/10aを上回った。基準収量を上回った事例では、1本重は窒素増肥に伴い増加する傾向であった(図1)。規格内収量は、苗箱施肥あり区では処理間差は認められず、苗箱施肥なし区では近似線が21kgN/10a程度で頭打ちとなった(図2)。窒素増肥による増収効果や調製率(データ略)を考慮すると、窒素施肥量は苗箱施肥あり系列は標肥区(苗箱施肥2kgN/10aに本圃施肥16kgN/10a)、苗箱施肥なし系列は+5増肥区(施肥標準18kgN/10aに3kgN/10a増肥)が妥当であると判断された。
3)苗箱施肥なしの+5増肥区は、標肥(-2)区に比べ1本重が重く、規格内収量および粗収入は多い傾向であり、調製率の低下は+9増肥区より軽微であった(表1)。また、慣行防除条件下において、病虫害発生に処理間差は認められなかった。
4)苗箱施肥あり区は苗箱施肥なし区に比べ1本重、規格内収量ならびに粗収入が増加する傾向を示した(表1)。苗箱施肥は施肥時期が定植2週間前から前日までの期間で定植時苗に問題は認められなかった(データ略)。
5)現地試験における苗箱施肥と窒素増肥の組み合わせ結果をみると、1本重、規格内収量、粗収入の向上が必ずしもみられないことから、組み合わせ効果は安定的でないことが示唆された(表1)。
6)資材費の増加額は、2kgN/10a施用時の苗箱施肥が1.84千円/10a(2023年12月調べ)、硫安による5kgN/10a増肥が1.76千円/10a(同)と見込まれた。これは粗収入の増加額に比べ十分に小さい額であった。
7)以上より、窒素肥沃度水準ⅠのうちCECが低い土壌において、規格内収量は4,000kg/10aを超えるが、1本重が十分でない条件に対し、緩効性窒素肥料による定植前の苗箱施肥または本圃の窒素増肥がねぎの1本重を増加させ、高単価規格の収穫比率の向上に有効であると判断できた。

4.留意点
1)窒素肥沃度水準ⅠのうちCECが低い土壌において、規格内収量が4,000kg/10aを超えるが、ねぎの1本重が不十分な条件で活用する。





詳しい内容については、次に問い合わせください。
道総研農業研究本部・企画調整部(原子力環境センター駐在)
電話(0135)67-7620 E-mail:central-agri@hro.or.jp

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