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堆肥と肥料がひとつに! 複合肥料の活用法

道総研 道南農業試験場 研究部 生産技術グループ
道総研 中央農業試験場 研究部 生産技術グループ

1.背景と目的
 YES!clean栽培では労力不足などにより、堆肥施用が困難になりつつある。そのため、堆肥施用に係る労力を低減し、複雑な施肥設計を簡単にする技術が求められている。肥料取締法改正で販売可能となった堆肥入り複合肥料は有機物と化学肥料を基肥で一度に施用でき、肥培管理の省力化が期待されているが、各作物のYES!clean栽培基準に適合し、安定生産を行う上で不明な点が多くある。
 そこで、本研究では園芸作物のYES!clean栽培基準に適合する堆肥入り複合肥料の窒素供給特性と活用法を明らかにすることを目的とした。

2.試験の方法
1)園芸作物に対する堆肥入り複合肥料の施用効果
 ねらい:作物種や作型が異なる条件において、窒素供給特性が異なる複合肥料の施用効果を明らかにする。
 試験方法:供試圃場・作物;道南農試ハウスでトマト、ほうれんそう(春まき~秋まきの4作)、中央農試露地でたまねぎ、キャベツ。
      処理区;対照区(堆肥+化学肥料、トマトは追肥あり)、複合肥料系列(有機物由来窒素割合30~40%で牛・豚ふん堆肥の窒素配合割合の異なる2種(低・高)を供試、全量基肥施用、ほうれんそうは1・3作目のみ施用)。

3.成果の概要
1)トマトでは、複合肥料系列で収穫初期に小果が増え、やや減収する事例があったが、収穫終了時の良果収量はいずれの圃場、年次とも対照区と同等以上となり、なかでも牛・豚ふん堆肥の窒素配合割合の低い複合肥料で施用効果が高まった(表1)。
2)ほうれんそうでは、複合肥料系列の2作平均の収量は対照区と同等以上であったが、牛・豚ふん堆肥の窒素配合割合の高い区では2作目に大きく減収する年次があった(表2)。複合肥料では、トマトは全量基肥、ほうれんそうは2作分の施肥を一度にでき省力が可能であった。
3)キャベツでは牛・豚ふん堆肥の窒素配合割合の低い複合肥料区で2カ年を通じて規格内収量が対照区に比べて多収となった(表3)。
4)たまねぎでは、収量水準が高かった2022年には複合肥料系列で減収したものの、平年並の収量水準であった2023年には複合肥料系列で増収した(表4)。収量水準が高くなる気象条件では、肥大期頃以降の窒素供給が対照区に比べて不足し、収量が劣る可能性がある。
5)以上から、トマト、ほうれんそうおよびキャベツでは、複合肥料の有機物由来窒素割合を30~40%、その内、牛・豚ふん堆肥の窒素配合割合を20%以下とすることで安定した施用効果が得られる。一方たまねぎでは施用効果が不安定となった。
6)北海道農業生産技術体系による試算の結果、有機物施用と施肥作業の省力化により、労働時間は人力作業が主なハウス栽培は3~13h/10a減(図1)、機械作業が主な露地栽培は同等と試算された(図2)。

4.留意点
1)本成果で得られた堆肥入り複合肥料の窒素供給特性および原料の配合割合などの知見は、肥料メーカーにおいて複合肥料製造の参考となる。
2)YES!clean栽培において、堆肥施用が困難あるいは肥培管理および施肥設計の省力化を図りたい生産者に活用される。また、減耗する土壌有機物を少しでも補いたい一般栽培生産者に活用される。
3)YES!clean栽培基準への適合は有機物由来窒素量として、施設・露地栽培それぞれで6.2kg/10aを満たすこと。
4)ハエ類の被害が懸念されるため、堆肥入り複合肥料散布後は速やかに混和する。








詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研道南農業試験場 生産技術グループ
電話(0138)77-8116 E-mail:donan-agri@hro.or.jp

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