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土塊を減らし種いもの使用量を減量するバレイショ防除畦の改良

農研機構 北海道農業研究センター 寒地畑作研究領域 スマート畑作グループ

1.背景と目的
 バレイショの収穫作業は早急な省力化が求められているが、機上での土塊や礫などの選別作業が効率化を妨げている。特に栽培期間中の防除作業で土塊が多発すると、作業速度が低下し、多発地点に合わせた人員確保が求められる。本技術では、土塊が発生しやすい場所を防除畦と想定し、防除機の踏圧が作物畦に及ばないように防除畦を改良する。また、防除畦の土塊減量に向けた畦配置と作業体系を提案し、土塊や緑化いもの発生量、畦数減による種いも使用量の削減、収量への影響を明らかにする。

2.試験の方法
 防除畦の一部にバレイショを植えずに防除機・トラクタが従来畦の頂部にあたる地点を通ることで土塊が減量できる改良防除畦を考案した。R2~R4年度に「男爵薯」、「トヨシロ」、「さやか」、「きたひめ」、「とうや」の5品種を栽培し、北海道農業研究センター芽室拠点内および生産者圃場における防除畦改良効果(土塊等発生量、収量性、作業速度)を調査した。

3.成果の概要
1)バレイショ収穫時の土塊の発生量は防除畦で明らかに多い。防除畦の2本にバレイショを植えずに、防除機・トラクタのタイヤが従来畦の頂部にあたるラインを走るように防除畦を改良することで土塊は減量できる(図1)。
2)改良した防除畦の土塊発生量は、踏圧の影響を受けない畦(対照)と有意差はなく、慣行防除畦より減少した。一方、緑化いもの発生は慣行の防除畦に比べて減るが、茎の倒伏、畦のひび割れなどにより対照よりも増える場合があった(表1)。慣行の防除畦の収量は茎の損傷などにより対照に比べ低下した。これに対して、改良した防除畦は茎の損傷が少なく、上いも1個重と規格内いも数が増加することが多い(表1)。対照畦に比べ、慣行防除畦は減収し、改良した防除畦は多収となることから、畦数が減っても圃場全体の収量は慣行と同等と試算された(表2)。なお、防除畦の改良により広がった通路に雑草が発生することがあるが、除草剤茎葉処理の畦間処理により防除が可能であった。
3)生産者圃場の収穫作業では防除畦の改良により土塊が多発する地点が減ったため、慣行の防除畦に比べて若干速い作業速度で収穫が行われた。作業速度の向上と収穫畦数の減少(18m間隔で防除畦を設置、条間0.75mの場合、慣行は24本、改良では2本の畦にバレイショを植えないため22本)により収穫時の投下労働時間は10%減ると試算された。現地における作業体系の変更点は表3に示したとおりであり、これらに伴うバレイショ生産の投下労働時間は慣行栽培を11.1時間/10aとした場合、約6%少ない10.4時間/10aと想定される。
4)以上のように、提案する防除畦の改良は、コスト削減効果はほとんど認められないが、従来の機械体系で実施可能であり、畦数が減ることで種いもの使用量を減しつつ、慣行の栽培と同等の収量が得られ、収穫期の労働時間短縮による作業競合の緩和に寄与する。

4.留意点
1)収穫作業において土塊の減量効果を生産者が明確に実感できる圃場は、礫が少ない圃場に限られる。礫の多い圃場は別途除礫等の対策を必要に応じて行う。
2)防除通路は畦間カルチ等の除草機を活用して均すとその後の防除作業が安定しやすい。
3)防除畦の通路における雑草発生は軽微である。また、発生が認められた場合は茎葉処理剤の畦間処理を行うことで防除が可能である。
4)本研究は、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期 スマートバイオ産業・農業基盤技術」により実施したものである。


詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
農研機構北海道農業研究センター 研究推進部 研究推進室
同 寒地畑作研究領域 スマート畑作グループ
電話:011-857-9260 E-mail:cryoforum@ml.affrc.go.jp

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