農に向き合う~農業経営部会会員紹介「音更・タイセイ飼料」
1.売上・利益計画を持たず、顧客本位に徹する
家畜飼料を加工販売するタイセイ飼料は、中部飼料(本社・愛知)の関連会社として1992年に設立。翌年、境田一郎現社長(62)が2代目に就任し、2000年には中部飼料から独立。経営理念の「お客様の要望を見つけ出し、これを満たす」に徹するため、売り上げ計画と利益計画を撤廃した。「数字のノルマがあると営業担当は、お客様にとって当面必要でないものでも勧めたくなるから」と境田社長。
農家ごとの要望に合わせた飼料設計を行い、顧客の経営力向上をサポートしてきた。その結果、同社の一顧客あたり販売量や取引先は増え、順調に増収。今年度の年商は85憶円となる見込み。現在は釧路支店(釧路町)とオホーツク営業所(紋別市)があり、役員4人、社員26人の体制となっている。
2.食品リサイクル型のTMR発酵飼料で注目
1997年から食品製造で生じる副産物を活用して、TMR発酵飼料(ウエットTMR飼料)作りに着手。2001年度「農水省食品リサイクル技術開発事業」において北海道で唯一採択されたほか、「フード・アクション・ニッポンアワード2011」では研究開発・新技術部門で優秀賞を受賞するなど、技術と実績を蓄積してきた。
試行錯誤を重ね、TMR発酵飼料の原材料として実用化したのは、ポテトチップス用のジャガイモ皮やビールの酵母、ニンジンジュースの搾りかすなど。境田社長は「いずれも栄養価、嗜好(しこう)性共に良い。常食する牛の健康状態は良好と聞く。今では全国から食品残さの活用依頼が舞い込むようになった。今はカボチャのワタを研究中」とその特徴や今後の事業アイデアを語る。
3.同友会の催事を機に、社員と一体感
同友会には1995年ごろ入会した。「経営者として何をすべきか模索していた時期。他の経営者から学びたかった」。思い出深いのは入会してすぐの収穫感謝祭だ。境田社長の担当は駐車場係で、その日は雨。ぬかるむ車を押し、泥だらけになって動き回った。「その姿を社員たちが見ていたのか、翌日から社員との一体感を覚えた」と振り返る。
境田社長の理想は「社員と社員の家族とお客様が、健康で幸せであること」だ。そのバイブルともいえるのが「リストラなしの年輪経営」(塚越寛著・光文社)。取引先を訪問する際は、文庫版を手土産としている。
4.畜産現場の課題解決する「アドバイザー」に
タイセイ飼料の要望対応は幅広い。特色であるTMR発酵飼料はオーダーメードで混合する。その際、活躍するのが細断型マルチベーラー「LTマスター」だ。日本にある10数台のうち2台を保有する。粉状素材も梱包でき、1日の必要量に合わせてロールの直径を変えられるのが強み。また採算は厳しいが、非遺伝子組み換え飼料も提供している。
「こうしたニーズをとらえ、顧客数を600軒に増やせたのは社員のおかげ。農業系大学出身者はほとんどいないが、お客様と共に問題に向き合うアドバイザーとして信頼を得てきた。今後も道東の畜産に役立てるよう、新たな人材を迎えて歩んでいきたい」と、境田社長は語る。
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