農に向き合う~農業経営部会会員紹介「幕別・折笠農場」
1.作付95Ha、3割有機
明治42(1909)年、福島県相馬市から初代が入植して以来、折笠健さんで5代目。幕別町内の畑95ヘクタールでジャガイモや豆類、小麦などを生産する。4代目の父秀勝さんの時代に販路開拓を始め、現在は関西、東海、関東、四国の生協、スーパー、自然食品販売店、レストランなどに販売。加工品の製造、販売にも取り組んでいる。
2011年に有機JAS認証を、18年にはJGAPをそれぞれ取得。有機農産物の生産に力を入れる。畑のうち有機JAS認証の畑は3割に上る。農薬と肥料を一切使わない農法で、大豆、小豆、小麦、ジャガイモ、リンゴを作り、それを原料にしたしょうゆやみそ、豆腐、納豆を委託製造している。
2.有機の精神、加工品にも
無肥料の有機栽培は15年前から始めた。化学肥料や農薬、除草剤などを使わず、畑の土を「自然のあるべき姿」に近づけ、農作物本来の能力を引き出す。安全安心だけでなく、おいしさも追求する。「有機だからおいしいのではなく、なぜおいしいのか」。取引先や研究機関などと連携してデータを収集、分析し、食べ方の提案も行っている。
自ら加工品の開発、製造にかかわるのも消費者の目線に立ってのこと。重度のアトピー性皮膚炎や化学物質過敏症などに悩む人の中には、一般的に市販されている調味料は体に合わないケースもある。折笠さんは「通常の有機でも反応してしまう人でも食べられる。普段から食卓に上がる調味料など加工品もさらに手掛けていきたい」と話す。
3.次代の十勝へ、仲間作り
同友会農業経営部会では、設立初期から父親の秀勝さんが活動してきた。折笠さんも在籍していたが、本格的に参加し始めたのは4年ほど前から。部会では副部会長を務める。「農経部会で仲間が増えるが、そこで一緒に何をするのかが大事。個人が良くても地域全体が元気でないとだめ。地域の底上げになる勉強会は何かなと思う」と話す。
今年、同部会は30周年を迎える。7月には全道の同友会の農業関連部会が集まる交流会を企画。大会スローガンを「破壊と創造 十勝アグリイノベーション」に決めた。開拓期から先人たちが苦労して築き上げてきた十勝農業だが、折笠さんの目には現在、良くも悪くも落ち着いていると感じる。現状に満足せずにステップアップしていくため、あえて「破壊」が必要だと強調。「自分たちのこと、十勝のことについて正しい情報を入れ、どん欲に前に進み、創造していく機会にしたい」と力を込める。
4.世界に求められる「十勝」に
農業王国の十勝でも有機栽培に対する理解は途上にある。その中で折笠さんは「オーガニックを必要とする人が1割増えるなら、十勝の作付面積も1割増やさないといけない。それが圧倒的な産地である十勝の責任」と話す。産地間競争は激しさを増し、自由貿易が進んで農業を取り巻く環境は変化していくが、先を見越して必要とされる農作物を作っていくことが地域の強みになる。「今考えているのは、いかにリスクを少なく大規模なオーガニックをしていくか、仲間作りをしていくか。世界に求められる物作りをしていきたい」と目標は大きい。
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