農に向き合う~農業経営部会会員紹介「芽室・大野フアーム.」
1.肉牛4000頭を飼育
芽室町の市街地から北に約5キロ、広大な敷地に畜舎、堆肥舎、飼料庫が立ち並び、周りには小麦などの畑が広がる。道路に面した場所にはレストラン。ここで畜産と畑作の循環型農業を行っている。
和牛交雑(F1)とホルスタイン去勢牛、和牛の肥育頭数は約2400頭。哺育・育成牛を合わせると約4000頭に上る。餌は小麦や大豆、デントコーン、牧草など自社で育てた作物を与えている。牛の堆肥が土になり、健康な土が良質な農作物を育て、それを牛が食べる。自社内で「牛」「土」「作物・牧草」が循環していて、安全で安心な牛づくりが付加価値になっている。
2.循環する農業 健康な土づくりから
大規模な畜産が目を引くが、代表の大野泰裕さんは「農業経営の基本は生産の部分。農業の基本は土、畑で、規模を大きくする中でもずっと考えてきた」と話す。「牛だけに専念してもいいのでは」と言われることもあるが、「そうすると『循環』を考えずに効率が一番になってしまうかもしれない。考え方は人それぞれだけど、思いを形にできるのが農家のいいところ」と一貫している。
そう考えるきっかけになったのが、就農3年目のオーストラリア留学。土壌分析に基づく農業を行う団体「SRU(ソイル・リサーチ・ユニオン)」の取り組みを知って衝撃を受けた。それまでの営農指導と違い、「過剰に施肥せず、畑を調べて必要なものを与える」という科学的な手法で、農場づくりの柱に掲げる「健康な土づくり」の理念につながっている。
3.経営学びに同友会へ
規模が大きくなるにつれて心を砕いているのは組織づくり。牛や畑を担当する従業員が同じ思いで取り組まないと、大野さんや会社が思い描く農業ができない。同友会での活動はその組織づくりに大きく役立った。
30代前半だった20年ほど前、経営を学ぼうと同友会に参加。大規模化を進め、維持していくには、経営の知識や技術が不可欠。「異業種の経営者との交流の中で悩みを共有し、どう解決していくかヒントをもらった。組織をどう維持していくか、実際にトラブルが起きたときに生かすことができた」と語る。農業経営部会では今から10年前の20周年の節目に部会長を務めた。
4.組織成長させたい
2017年には畜産分野では道内第1号となる日本版GAP(農業生産工程管理)認証を取得した。昨年は20年の東京五輪・パラリンピックで選手や来場者に提供する食事で、道が選んだ食材として提供可能なリストにも選ばれた。大野さんは「食材に使ってもらえるよう日々の生産をきちんとしていかないといけない」と話す。
5年前からは、自社で育てた牛の肉などの料理、パン、菓子を提供するレストランを始め、今後も消費者と直接つながる機会を増やす考え。大野さんは「加工や物販など6次化の事業をしっかり伸ばしていきたい」と話している。
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