鹿追百年新聞「マチ挙げて人づくり 幼小中高一貫教育」
新たに「国際探究コース」を創設した鹿追高校
「環境」と「英語」軸に
変化の早い時代を生き抜き、持続可能な社会を構築する担い手をどう育むか。鹿追町では行政と学校、保護者、地域が連携し、この難しいテーマに挑み続けている。
新たな価値へ 国際探究コース 鹿追高校
町が進める幼小中高一貫教育の中で、自らを「鹿追町の最高学府」と位置付ける鹿追高校。２０２１年度に「国際探究コース」を新設し、特別進学コースとの２コース制となった。
国際探究コースは英語学習を充実させることに加え、生徒のイノベーション（革新）を生み出す力を養うことを目指しているのが特長。生徒は主体的に課題を見つけ、生徒同士や教職員、時には外部の大人ともコミュニケーションを取りながら探究を深める。
町が歩む次の１００年は未知の課題にあふれ、答えを与えてくれる教科書は存在しない。そこでは鹿追高校の卒業生のように、創造性をもってものごとに挑む力を身に付けた人材が求められてくる。
「ゆきみちクッキー」の完成を喜ぶ北村さん
未利用資源でクッキー商品化
鹿追高校が国際探究コース創設を前に、２０年度に実施した探究学習「鹿追創生プロジェクト」では、生徒がさまざまな分野でその道の「プロ」の力を借りながら地域課題解決に挑んだ。
「調理・製菓」の分野で学んだ３年の北村梨紗さん（１８）は、未利用資源の有効活用をテーマに設定。外部講師の「プロボノ・メンター」から、チーズ製造時に発生する乳清（ホエー）の存在を教えてもらい、これを菓子の原料として活用することを目指した。
町内のカフェやデザイナーらの力も借りながら、７月にホエーを使った「ゆきみちクッキー」の商品化にこぎ着けた。北村さんは「初めての取り組みで、最初は何をしようか戸惑ったけど、素晴らしい体験をさせていただいた。高校生だけでは到底できないことを実現できた」と感謝する。
子どもに英語を使う機会を提供する町教育委員会主催の「イングリッシュ・キャンプ」。子どもたちはＡＬＴ（外国語指導助手）と遊びながら英語に親しむ。鹿追高校生が運営を手伝うことも
地域課題に挑戦 カナダ姉妹都市、ジオパークも生きた教材
２１世紀を生きる子どもたちの前には、グローバル化というチャレンジとチャンスに満ちた世界と、地球環境問題という厳しい現実が待ち受けている。そんな世界を主体的に生きていく力を養うため、鹿追町は「英語教育」と「環境教育」を軸とした幼小中高一貫教育を続けている。
英語教育では「使える英語」を身に付けることを意識。カナダ・ストニィプレイン町と姉妹都市提携している縁を生かし、就学前から異文化体験や英語でのコミュニケーションの機会を提供する。鹿追高校では１年生全員がカナダに短期留学し、国際性や語学力を磨く。
環境教育は、「ジオパーク」に認定されている町域全体がフィールド。例えば永久凍土が残り、氷河期の生き残りとも言われるナキウサギが生息する然別湖周辺。広大な農地が広がる平野部。地球温暖化が自然や産業に与える影響を知るのにうってつけの生きた教材が、身近に広がっている。
オンライン公設塾の自習スペース「ペンギン・コロニー」。生徒はタブレットなどを用いて学ぶ
ＩＣＴ加速 オンライン公設塾開設
鹿追町の教育の特長の一つとして、ＩＣＴ（情報通信技術）の導入に積極的な姿勢が挙げられる。
ＩＣＴ教育の必要性は長く叫ばれてきたが、機器を導入する以前に、それをどう使いこなすかの議論に時間を要し、なかなか前に進まなかった。コロナ禍で全国的に機器の導入が進んだが、鹿追町では以前から小学４年生以上の児童・生徒１人１台タブレットを実現。道立の鹿追高校にもタブレットやＷｉ－Ｆｉの整備を進めていた。
インフラが整っていたおかげで、コロナ禍でその活用が一気に加速。さまざまな学習支援アプリを積極的に導入する他、今年度から鹿追高校生向けに受講無料の「オンライン公設塾」を開設した。
塾生はバーチャル空間上で東京や札幌の大学生、大学院生から指導を受けられるもの。また、町民ホールを自習スペースに改修し、学びをサポートしている。塾生の堂田進之助さん（３年）は、「授業と自習だけで不安があったのでとてもありがたい。分からないところはその場で聞けるので、すごく勉強になっている」と話し、志望する英文学科合格に向けて学習に力を入れている。
