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農に向き合う~農業経営部会会員紹介「更別・コタニアグリ」

「農業を引っ張るような仕事をしたい」と語る小谷行正社長(小山田竜士撮影)

1.肉牛牧場から畑作専業へ
 帯広市で祖父の代から酪農、畜産を始めた。1966年に更別村の現在の場所に土地(112ヘクタール)を購入、翌67年に会社を設立し、初妊牛や肥育牛を手掛け、本州へ出荷した。自らの手で牛舎を建てながら頭数を増やし、一時は500頭を超える牛を飼育していたが、第1次、第2次オイルショックによる需要急減に遭った。その後、畑作に重心を移し、90年に専業へ転換した。

 農地は徐々に拡大し、現在170ヘクタール(うち賃借地約15ヘクタール)。畑作4品(秋まき・春まき小麦、じゃがいも、ビート、豆類)のほか、菜種、亜麻、エゴマ、マスタードも生産する。

 菜種や亜麻が5~7月に黄色や青紫色の花を咲かせる畑は美しく壮観で、観光スポットとしても知られる。

2.大規模効率経営 欧州へ先端機械買い付け
 大型のコンバインで多くの収穫作業ができる欧州型農業を目指し、積極的に設備投資をしてきた。父子2人(広一会長、行正社長)と繁忙期の少数の従業員で広大な畑作地を運営できるよう機械化による効率を追求。90年代後半から英国やドイツ、フランス、イタリアの国際農機展に足を運び、現地の農機、部品メーカーと直接商談した。

 衛星利用測位システム(GPS)搭載の農機を導入したのは10年以上前で、小谷広一会長は「日本でも最初の1、2台目だったろう」と言う。農機の7割は直輸入。最近では畝を感知するカルチベータを購入、畝間の除草の効率化などに取り組んでいる。

 2008年に菜種、10年に亜麻を始めたのは、同じコンバインで大半の作業ができるからで、効率運営の一環でもあった。

3.農家から経営者へ 知識・マインド吸収
 北海道中小企業家同友会とかち支部の農業経営部会に加盟したのは2008年。広一会長が芽室町の農家らに誘われたのがきっかけで、小谷行正社長も後を追うように後継者が参加する未来社長グループ「あすなる会」に加わった。

 同じ同友会メンバーの尾藤光一さん(尾藤農産社長)や大野泰裕さん(大野ファーム社長)らが1990年に立ち上げていた「SRU(Soil Research Union)」にも加入し、与えすぎない施肥、足りない要素を補ってミネラルバランスが取れた土壌を実現、収量や品質の安定化につなげている。

 行正社長は、農家同士や村内の交遊から外にも目を向け、異業種の経営者と交流することを通じて、「数字や労務から経営者としての姿勢まで多くを学ばせてもらった」と言う。今春には代表者となり、父から経営を引き継いだ。

4.消費者に近づく6次産業化
 大規模効率経営がほぼ完成に近づき、設備も世界的な水準に追いついてきたと自負している。農地が出てくれば規模拡大も探りたい。その一方で、菜種や亜麻、エゴマから作る食用油を製造・販売する6次産業化も追求し続けている。

 「生産だけではなく、消費者とつながることが大事」(広一会長)と2012年には十勝の仲間と食用油の製造・販売会社を設立、「十勝農(みのり)工房」ブランドの製品を出荷する体制を整えた。

 製品の流通を理解するとともに消費者ニーズにもアンテナを張る。体に優しい食用油と知られるにつれ、自社ホームページに連絡が来て、サンプル出荷要請や大手インターネット通販サイトでの販売にも発展した。花が咲く季節には畑を見に来たいと連絡してくる人や亜麻の繊維を使いたいなど多様な声が届くようになった。

 行正社長は「効率向上や将来の設備投資計画もあるし終わりはない。まだ誰も実験できていないことにも挑戦したい。農業を引っ張っていくような仕事を」と意欲を燃やしている。


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