目が浅くて害虫に強い! 早生ばれいしょ「北育28号」
道総研 北見農業試験場 研究部 馬鈴しょ牧草グループ・生産技術グループ
道総研 中央農業試験場 作物開発部 作物グループ・生物工学グループ
病虫部 予察診断グループ
道総研 十勝農業試験場 研究部 豆類畑作グループ
1.背景
ばれいしょは北海道畑作の基幹作物であり、輪作体系維持のためにも、その安定生産が重要である。北海道では昭和47年にジャガイモシストセンチュウの発生が確認されて以来、発生面積の増加が問題となっており、対策としてジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種の開発および普及が進められている。
平成30年度の北海道のばれいしょ作付け面積は50,800ha で、そのうち3分の1は生食用・業務加工用品種が占める。現在、北海道における生食用の主力品種は「男爵薯」である。「男爵薯」は秋まき小麦の前作となりうる早生であり、高い認知度とブランド力から長年にわたりその座を保持し続けている(平成30年8,862ha)。しかし「男爵薯」は、ジャガイモシストセンチュウ感受性であり、さらに、そうか病等の各種病害抵抗性が弱く、塊茎の目が深いなどの栽培・加工面の欠点も多い。ジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種への置き換えが長年の課題である。
2.育成経過
「北育28号」は、「男爵薯」との置き換えが可能なジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ早生品種の育成を目標として、早生の「男爵薯」を母、シストセンチュウ抵抗性を持ちそうか病抵抗性が優れる「北系39号」を父として、平成22年に北海道立総合研究機構北見農業試験場にて人工交配を行い、翌平成23年に播種した実生集団より選抜された系統である。なお平成28、29年に「北系66号」の系統名で生産力検定試験、道内関係機関の地域適応性検定試験並びに特性検定試験に供試した。平成30年より「北育28号」の地方番号を付与して優良品種決定基本調査に供試し、令和元年より優良品種決定現地調査に供試して実用性を検討してきた。
3.特性の概要
「北育28号」は「男爵薯」並の“早生”で、収量性が「男爵薯」より明らかに優れ、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性と“中”程度のそうか病抵抗性を併せ持つ。「男爵薯」同様白肉で、塊茎の目の深さが「男爵薯」より浅いことから、剥皮歩留まりが高く、業務加工用途での優点となる。「男爵薯」ほど風味は強くなくあっさりとした食味で、粉粘性は「男爵薯」と早生白肉品種「きたかむい」の中間で、しっとりとした食感である。
4.普及態度
「北育28号」を主にジャガイモシストセンチュウ発生地帯の「男爵薯」と置き換えて普及することにより、北海道におけるばれいしょの安定生産および栽培振興に加え、北海道畑作の輪作体系維持に貢献できる。
1)普及見込み地帯:北海道一円
2)普及見込み面積:2,000ha
3)栽培上の注意事項:なし
本技術内容についての問い合わせ先
道総研十勝農業試験場 豆類畑作グループ
電話(0155)62-2431
E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp