病害回避へ イモ新品種 30年に全転換 カルビーポテト
カルビーの原料調達を担うカルビーポテト(帯広市、中村一浩社長)は、重要病害ジャガイモシストセンチュウの抵抗性品種の普及を進めている。現在の使用量は全体の25%だが、同社が開発した新品種「ぽろしり」などに、2030年には全量を切り替える予定。「ジャガイモ産業を守る」試みとして注目されている。
同社は昨年、全国の契約農家1800戸から27・2万トンのジャガイモを調達。うち道内産は8割近くで、十勝は全国の4割以上を占める最大産地。受け入れたジャガイモはポテトチップスなどに加工されている。
シストセンチュウは、人体への影響はないがジャガイモに寄生すると養分を吸い収量を減らす。卵は低温や乾燥に強く10年以上生存し、薬剤防除も困難。一度侵入すると根絶が難しいとされている。
同社が調達するジャガイモは現在、病害に対する抵抗性のない「トヨシロ」「スノーデン」が全体の75%を占める。この病害リスクを抱えることから、10年余りで全量を抵抗性品種に切り替えることにした。
新品種の一つが同社の馬鈴薯(ばれいしょ)研究所(芽室町)が開発した「ぽろしり」。シストセンチュウ以外の病害にも強く、トヨシロより収量が多いのが特長で、「ポテトチップス」「じゃがりこ」といったカルビーの主力商品に適している。他にも既存の抵抗性品種や長期貯蔵が可能な新品種も検討する。
カルビーは現在、一部輸入を含む原料ジャガイモを100%国産にする方針で、契約農家の生産環境に合わせた新品種の提案や技術指導を進める構え。同社は「シストセンチュウは将来的に北海道のジャガイモ栽培の大きなリスクになる。ぽろしり以外にも優良品種の開発を進める」としている。
道内ではでんぷん原料用のジャガイモも抵抗性品種への切り替えが進められている。北海道澱粉協会(札幌市)によると、抵抗性品種の割合は今年産の4割から3年後には100%にする計画。(安田義教)
ジャガイモの根に寄生する害虫で大幅な収量低下をもたらす。薬剤による防除は難しい。卵を包む殻(シスト)を作り、土壌中で10年以上も生存でき、輪作でも生息数を減少させられない。抵抗性品種はシストから生まれたセンチュウが栄養を吸収できず生き残れないため、密度を低下させることができる。