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陸別百年新聞「まちを元気に 応援団」

りくべつ宇宙地球科学館の上出館長

教育文化、イベント、食…支える人々
 陸別町内外には、教育文化や催し、商店街で力を尽くし町に元気をもたらす人々も多い。それぞれの立場で町のために奮闘する思いを紹介する。

オーロラ研究の権威
◆りくべつ宇宙地球科学館・銀河の森天文台館長 上出洋介さん(75)

 「陸別は神様のような存在。研究の材料を提供してくれ、人も温かい」

 りくべつ宇宙地球科学館・銀河の森天文台の館長でオーロラ研究の権威、上出洋介さん(75)は語る。

 小学生のころ、礼文島ですごしたことがある。船が沖に見えなくなることで、地球が丸いと感じた。次に地球の直径を測ろうと、山に登り船の見え方を観察した。「自然の中で遊び、疑問に思うこと、これが理科」。ラジオと新聞が伝えるオーロラに夢中になった。

 札幌西高、北大、東大大学院でもこの道一筋。1989年、町職員の津田浩之さんらが低緯度オーロラのカラー撮影に成功し、陸別町とつながった。

 名古屋大学太陽地球環境研究所の教授時代、天文台構想に意見を求められ、「望遠鏡の口径が日本一でもすぐに追い抜かれる」と即答。名大をはじめ、全国共同利用機関の研究施設も同居する異例の天文台となった。

 国際会議の誘致や、小学生への出前授業にも取り組む。「楽しい時間を過ごさせてもらった陸別への恩返し。透明な空気、星空、どうか地域資源を誇りに思ってほしい」と話す。



郷土史研究を中心に、地域の文化活動に携わる斎藤さん

寛斎研究に尽力 サロンも
◆あかえぞ文藝舎主宰・斎藤省三さん(85)

 関寛斎の研究者として知られる斎藤省三さん(85)=東1条2=は、町民文芸誌「あかえぞ」の編集や私設ギャラリーの運営も手掛け、地域の文化を下支えしている。故郷が大きな節目を迎え、「寛斎のチャレンジ精神をいつまでも」と語る。

 1933年、陸別生まれ。帯広柏葉高校、国学院大を卒業し、呉服店を経営していた実家の手伝いで陸別に戻った。61年に役場に入り、議会事務局長、広報広聴町史編さん室長などを歴任した。

 高校時代、当時教諭だった棚瀬善一さん(帯広市史執筆者)と出会い、郷土史に関心を強めた。杉田稔町長の下で寛斎研究を本格化、ライフワークになった。「寛斎は生涯、休みなく挑戦し続けた。72歳で開拓を志したバイタリティーに驚く。その人間的な魅力に引かれた」とする。

 町関寛翁顕彰会と町郷土史研究会の事務局長を務める傍ら、文芸誌を刊行する「あかえぞ文藝舎」を主宰。自宅を改装したサロンガンビーは文化活動の発信拠点になっている。

 「80年は故郷で暮らしており、100年はあっという間と感じる。(陸別には)これからも寒さを生かし、酪農・林業、歴史を大事にして発展してほしい」と話している。



エイデル研究所と大塚会長

東京発 共に歩み30年
◆エイデル研究所・大塚智孝会長(88)

 「100年、町を守ってきた町民に敬意を表す。30年を共に歩めたことは貴重な財産で感謝したい」と語る。

 1930年、佐賀市生まれ。55年、早稲田大学大学院法学研究科修了後、総合労働研究所編集長として入社。83年エイデル研究所を立ち上げ、代表に。2018年3月、会長に就いた。エイデル研究所と電機連合音響部会(当時は電機労連)、陸別町の3者が共催するイベント「リ・クリエーションサマー」は、今年30回目の節目を迎える。

 「調印式の日、陸別町を訪問した際、まだ新しかった自動ドアが透明すぎて、絵を見ながら頭をぶつけた。大きなばんそうこうをつけて臨んだのが、よい思い出」と、照れ笑いしながら振り返る。

 首都圏と町の子どもたちの相互体験や、大学生の農林業体験を実施。16年から「陸別町東京事務所」も担うなど、首都圏での情報収集・発信で果たす役割は年々大きくなっている。「今後も陸別とつながった縁を大切にしていきたい」と話している。



町内外にファンを持つ秦食堂と店主の秀二さん

来店7割は町外 海外客も
◆秦食堂・秦秀二店主

 1947年創業の秦食堂(町大通、秦秀二店主)は、町内外に多くのファンを持つ有名店。外回りの会社員や観光客など町外の客が7割を占め、最近ではインバウンド(訪日外国人旅行者)の姿も見られる。

 菓子店を営んでいた創業者の秦正蔵さん(故人)が戦後、菓子の材料が手に入らなくなったことから、そば店に転業。当時、陸別でもそばを栽培する農家が多くあったという。

 札幌でサラリーマン生活を送っていた3代目の秀二さん(52)が94年に陸別に戻り、2002年に父克己さん(86)から店を引き継いだ。現在は4人のパート従業員を雇い、母セツさん(84)と店を切り盛りする。

 店舗隣に製粉工場があり、つなぎなしで道内産そば粉100%の手打ちそばを提供する。定休日も製粉作業があり休みはほとんどないが、秀二さんは「お客さんが『おいしい』と言ってくれる。それしかない」と話す。

 寒い日に人気の「かしわそば」(1000円)などそばのメニューは20種類。丼物や昔ながらのカレーもある。午前11時~午後7時ごろ。日曜定休。



「PRC2☆」のメンバー。左から石橋さん、松浦さん、高橋さん、清水さん

ぷらっとにぎわう催し企画
◆町内女性4人組「PRC2☆」 高橋理恵さん 松浦里香さん 石橋千治さん 清水ちひろさん

 地域の活性化に取り組む町内の女性4人組がいる。高橋理恵さん、松浦里香さん、石橋千治さん、清水ちひろさん。2年前に「PRC2☆」を結成して以来、食や体験型のイベントを幅広く企画してきた。

 活動拠点は町内の複合商業施設「コミュニティプラザ☆ぷらっと」1階のフリースペース「ぷらっと広場」。2、3カ月に1回のペースで雑貨作りやハンドマッサージ教室、カフェなどを展開している。

 人気を集めたのが総菜マーケット。サラダやスペアリブなど20種類以上のメニューを用意した。開店前から列ができ、「片っ端から売れて補充が間に合わなかった」(高橋さん)ほどの盛況ぶり。追加で食材も買い足したが、仕事帰りの人が訪れる夕方には完売してしまった。

 人口も減り、住民が触れ合う機会もめっきり減った。商業施設も限られるのが現状だ。手料理の販売会やゆったり過ごせるカフェに人が集まるのもそんな状況の裏返しかもしれない。イベントを開催するたびに「次いつやるの」と期待の声も多く寄せられる。

 町内で50年近く暮らす高橋さんは「まちの風景も寂しくなりつつある。はやっていることを調べたり、宣伝にも力を入れながら、イベントで陸別を盛り上げたい」と意欲を新たにする。

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