これからどうなる?北海道の農家戸数と平均経営規模
道総研 十勝農業試験場 研究部 生産システムグループ
1.試験のねらい
農業統計を用い、北海道の市町村別に販売農家の農家戸数、経営耕地面積、1戸当たり平均経営耕地面積等の動向予測をおこなう。
2.試験の方法
1)動向予測精度の改善
(1)既往研究との予測誤差の確認:2010年センサスに基づく2015年予測値と実績値を比較。
(2)既往研究の改良による予測精度の検証: 既往研究の予測精度の改善を試みる。
2)販売農家の農家人口・農家戸数の動向予測
(1)分析対象:北海道市町村別(179市町村)、14振興局別
(2)分析期間:2015~2030年
(3)分析方法:2015年センサスに基づくコーホート分析
3)販売農家の経営規模の動向予測
(1)平均経営耕地面積規模の動向予測:経営耕地面積、1戸当たり平均経営耕地面積
(2)平均乳牛飼養頭数規模の動向予測:乳牛飼養戸数、1戸当たり平均乳牛飼養頭数
3.試験の結果
1 )経営主がより高齢になるまで営農を継続する傾向にあること等を踏まえて予測法を修正した。道総研農試資料第40号では2015年の農家戸数誤差が10%以上となる市町村は30%あったが、これにより19%に縮小できた。農家人口誤差は4.3%だったが、1.2%に改善できた。
2 )販売農家戸数は2000年から2015年の15年間で6.3万戸から3.8万戸(2000年比61%)に減少したが、2030年に2.5万戸(2015年比66%)となることが予測された。販売農家戸数の減少率は石狩、上川等の水田作地帯で高い傾向が見通された(表1)。
3 )販売農家人口は2015年に14.3万人だが、2030年に8.4万人(同59%)となることが予測された。また販売農家人口に占める高齢者比率は2030年に39%となることが予測された(表1)。
4 )販売農家の耕作する経営耕地面積は2015年までの10年間で96.6万ha から90.1万ha に6.6万ha(2005年比7%)減少したが、このうち4.4万ha は協業法人等の組織経営体によって担われ、経営耕地面積の減少は2%に抑制できた。特に上川、空知等で販売農家の経営耕地面積が大きく減少しつつも、組織経営体がこれを補完した。販売農家の経営耕地面積が過去10年間と同程度で減少することを想定すると、2030年には販売農家の経営耕地面積は81.2万ha(2015年比90%)となることが予測され、日高、上川等において販売農家の経営耕地面積の減少が大きいことが見通された。これまで以上に、農地の受け手として組織経営体が果たす役割が重要となる。
5 )予測された販売農家の経営耕地面積を維持するため、必要となる販売農家1戸当たり平均経営耕地面積は、2030年には北海道平均で32.4ha(同137%)、酪農地帯では平均60~90ha、畑作地帯では平均40~60ha、水田作地帯では平均15~30ha が予測された(表2)。
6 )販売農家の乳牛飼養戸数は2015年に5.9千戸であるが2030年に4.0千戸(同68%)となることが予測された。販売農家の乳牛飼養頭数が過去10年間と同程度で推移することを想定すると、販売農家の乳牛飼養頭数は63.3万頭(同88%)となることが予測された。
7 )予測された販売農家の乳牛飼養頭数を維持するため、必要となる販売農家1戸当たり平均乳牛飼養頭数は、2030年には北海道平均で157頭(同129%)となることが予測された。これまで以上に、組織経営体による乳牛飼養頭数の拡大が重要となる(表2)。
【用語解説】
販売農家: 家族(1世帯)によって営農される経営体(経営耕地面積30a 以上または農産物販売金額50万円以上)であり、協業法人や農家以外の事業体(組織経営体)を含まない。
コーホート分析: 同じ年齢階層に属している人口(コーホート)に移動確率を乗じることで、次期の人口を予測できる分析手法。
実績値:農林業センサスに示された値。
予測値:農林業センサスを用いた動向予測結果の値。
実績補正値:予測に係る制約のため、動向予測から除外した市町村の値を除いた実績値。
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