野良イモ退治だけじゃない! 土を凍らせて畑の生産力アップ
道総研 北見農業試験場 研究部 生産環境グループ
道総研 十勝農業試験場 研究部 生産環境グループ
農研機構 北海道農業研究センター 生産環境研究領域
農研機構 北海道農業研究センター 大規模畑作研究領域
1.試験のねらい
雪割りによる土壌凍結深制御技術(平成25年普及推進事項)は、冬に土を凍らせて畑に残ったばれいしょを死滅させる野良イモ対策として開発され、十勝地域を中心に普及している。本試験ではこの技術を応用・発展させ、土壌凍結促進が畑地の理化学性改善やそれに伴う作物生産性向上に有効なことを示す。また、凍結深制御手法としてオホーツク地域で広まりつつある雪踏みの特性と活用法を明らかにするとともに、既存の野良イモ対策用の土壌凍結深推定システムを汎用的で広域に活用できるように改良する。
2.試験の方法
1)土壌凍結促進が畑地の理化学性と作物生産性に与える効果の検討
2)雪踏みによる土壌凍結深制御手法の拡張
3)土壌凍結深推定システムの改良
4)土壌凍結深制御による畑地の生産性向上効果の実証と技術導入時の留意点の抽出
3.試験の結果
1 )土壌凍結促進による砕土性向上は、土壌の種類を問わず、凍結深が20数cm 以上で効果が得られ(表1)、播種床造成で3回以上の砕土・整地を行う場合に回数削減の可能性がある。透水性向上は、低地土や泥炭土において凍結深が30cm 程度で効果が得られる可能性がある。窒素溶脱低減は、凍結深40cm 程度までは深く凍結させるほど効果が大きい傾向にある(図1)。
2 )これらの土壌理化学性に対する効果が共通して得られる凍結深は30~40cm の範囲であるが、凍結促進で融雪後の地温上昇と土壌の乾きが遅れること(図2)、また現実的な凍結深制御の精度幅は± 数cm であること、さらに過剰凍結による融雪水の滞水等の弊害を防ぐため、凍結深は野良イモ対策と同じく30cm を目標に制御する。
3 )土壌凍結促進による作物生産性の向上は、砕土性や透水性、保水性の向上等の土壌物理性の改善と窒素溶脱低減効果の両者によるものと考えられる。そのため、これらの効果が共通して発現する凍結深30cm 程度の場合に、大豆、スイートコーン、たまねぎはいずれも生産性が向上する(表2、農試試験)。ただし、4月下旬に播種した直播てんさいでは、天候不順時の地温上昇の遅れが影響し、効果が発現しにくいことがある。
4 )雪踏みによる凍結深制御は雪割りと同等の野良イモ対策効果がある(データ省略)。雪踏みは雪割りに比べ、使用機種が安価で共同利用がしやすい長所を持つが、積雪深が深い場合や傾斜地等での施工にはやや難があり、立地条件等を考慮した凍結深制御手法の選択が必要である。
5 )既存の土壌凍結深推定システムの対象地域を十勝のみから全道一円に拡大中である(現時点で道北のみ未対応)。また、積雪深分布推定法を改良して凍結深の推定精度の向上を図るとともに、雪踏み(圧雪)条件での凍結深推定モデルを新システムに導入した(図3)。
6 )土壌凍結深制御による生産性向上効果を現地で検証したところ、窒素溶脱低減に影響する積雪量の違いや窒素施肥量の多寡が効果の発現程度を左右したものの、各種作物ともに目標凍結深30 cm を目安に制御すると効果が得られることが実証された(表2、現地実証試験)。
【用語解説】
雪踏み: タイヤローラーを用いて畑全面を圧雪し、土壌に冷気が伝わりやすくすることで、土壌凍結を促進する方法。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp