ポイントはここ! でん原用ばれいしょの生産コストを見直そう
道総研 十勝農業試験場 研究部 生産システムグループ
1.試験のねらい
でん原用ばれいしょに係る生産費の事例調査を通して生産実態を分析するとともに、現状の生産コストに係る問題を特定し、低コスト生産に必要な取り組みを明らかにする。
2.試験の方法
1)生産費調査からみたでん原用ばれいしょ生産コストの特徴
2)道内におけるでん原用ばれいしょ生産の地域性と調査対象地域の選定
3)調査対象地域におけるでん原用ばれいしょ生産コストの実態
4)でん原用ばれいしょ生産における高コスト要因とコスト低減対策
3.試験の結果
1 )農水省が実施する生産費調査の分析により、作付面積規模によるでん原用ばれいしょ生産費の差を確認したことから、規模間差を把握しやすい2町を調査対象として選定した。十勝X町はでん原用ばれいしょと生食・加工用が併存する非専作地域であり、作付比率と作付面積の経営間差が大きい。オホーツクY町はでん原用ばれいしょ作付比率が高い専作地域であり、作付面積に経営間差がある。両町のでん原用ばれいしょ生産量の多くを担う経営層として、X町では作付比率と作付面積の異なる4類型を、Y町では作付面積の異な
る2類型を設定した。
2 )生産費調査の北海道平均値は84,253円/10aであるが、調査した各類型の全算入生産費は76,697~100,747円/10aと差があった(表1)。X町では、作付比率が低く作付面積が小さい経営層(小規模・非専作X)で農機具費が高かった。作付比率が高まり作付面積が拡大する(中規模・非専作X、大規模・専作X)と一定程度まで農機具費は低下するが、農業薬剤費は増加した。Y町でも、農機具費と農業薬剤費に同様の傾向が認められた(中規模・専作Y、大規模・専作Y)。また、両町を比較すると、Y町の方が種苗費や労働費が高い(中規模および大規模・専作X、中規模および大規模・専作Y)という生産費調査では把握できない地域間差が確認できた。
3 )地域間差としては、種苗費の差と労働費の差を指摘できる。播種量を比較すると、畦幅や株間が同程度であっても、Y町の播種量が50kg/10a 程度多かった。労働費の差は種子予措に係る作業時間の違いがあり、Y町ではカッティングプランタを用いず、種いも選別といも切り作業に労働時間を要していた。
4 )規模間差としては、農業薬剤費と農機具費の差を指摘できる。作付面積が大きい経営層ほど、散布間隔をあけずに単価が高く効果の長い殺菌剤を用いており、その傾向はY 町で顕著であった(表2)。一方、作付比率の低い経営層では、作業の簡略化を目的として、でん原用ばれいしょに生食・加工用と同じ防除体系をとり農業薬剤費を増加させる例がみられた。
5 )農機具費の差は農機具利用の違いに起因していた。生食・加工用を作付する場合、でん原用ばれいしょにも砕土装置付き培土機が用いられるため、若干増加した。さらに作付面積が小さいとでん原用収穫機の負担面積が小さいため農機具費は高く、特に5ha 未満で明瞭に高かった。一方、専用機の負担面積が拡大するため、作付面積の大きい経営層ほど農機具費は低下するが、10ha 以上では下げ止まることが確認できた。
6 )以上の調査結果に基づき、高コスト要因を種苗費、農業薬剤費、農機具費、および家族労働費ごとに整理し、コスト低減対策を提示した(表3)。
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