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平成29年に特に注意を要する病害虫

中央農業試験場 病虫部 予察診断グループ

1.はじめに
 北海道病害虫防除所、道総研各農業試験場、および道農政部技術普及課等で実施した病害虫発生予察事業ならびに種々の試験研究の結果から平成29年に特に注意すべき病害虫について報告する。

表1 平成28年にやや多発した主要病害虫

2.平成28年の病害虫の発生状況
 平成28年は、夏季が多雨となったことから軟腐病など腐敗症状となる病害が多発した。また、秋まき小麦のなまぐさ黒穂病が道内の広域にわたって発生し大きな問題となった。一方、てんさいの西部萎黄病、たまねぎのネギハモグリバエの発生量は前年に比べ少なくなった。 主要病害虫のうち多発となったものは、秋 まき小麦の赤かび病、ばれいしょの軟腐病、 てんさいの根腐病(黒根病を含む)、たまねぎの軟腐病、だいこんの軟腐病、りんごの黒星病、腐らん病、やや多発となったものは、水稲の紋枯病、ヒメトビウンカ、イネミギワバエ、バレイショの塊茎腐敗、黒あし病、たまねぎのネギアザミウマ、りんごの斑点落葉病であった(表1)。

3.平成29年に特に注意を要する病害虫

1)あぶらな科野菜のコナガ
   あぶらな科野菜の重要害虫であるコナガは、平成26年以降に道内で採取された個体から、ジアミド系薬剤の抵抗性遺伝子保持個体(以下、抵抗性個体)が確認されており、生産現場からも、ジアミド系薬剤によるコナガの防除効果が当初よりも低下しているとの指摘がある。コナガは、道内では露地での越冬ができないため、春に飛来してくる個体群に抵抗性個体が含まれていると推察されている。しかし、近年、冬期間もあぶらな科野菜を栽培している施設などで、抵抗性個体が越冬している懸念が示されたことから、越冬が疑われる地域において春季の抵抗性個体割合を調査した。その結果、平成26年からの3カ年調査してきた道内他地点における春季の抵抗性個体割合とほぼ同程度の低い割合であった。このことから、道内では春季の飛来個体群に含まれる抵抗性個体が当年の発生源であると考えられた。しかし、農耕期間中にジアミド系薬剤を多用した地点では、夏季の調査において抵抗性個体割合が高まっており、本剤の効果の低下を招くことが示された。以上のことから、コナガの防除にあたってジアミド系薬剤を使用する場合、以下の点に留意する必要がある。
  ① 連用は避ける。
  ② 防除後効果の確認に努め、効果が低い場合は、すみやかに他系統薬剤による追加防除を実施する。
  ③ 灌注剤、茎葉散布剤は、所定の希釈倍数、処理量を遵守する。
2)りんごの黒星病   黒星病は、りんごの葉および果実に病斑を形成して品質を低下させ、著しい収量減の要因となる重要病害で、防除は不可欠である。本病は、平均気温15~20℃で多雨となったときに多発するとされており、平成28年は、6月から8月まで多雨となったことから発生が増加したと考えられる。病原菌は枝や葉の病斑で越冬するため、当年だけでなく、翌春の感染源の増大も懸念される。このため平成29年度も注意が必要である。近年、6~8月に多雨となる傾向が続いていることから、重点防除期以降も、本病に対する薬剤散布間隔が開きすぎないよう防除を実施する必要がある。
   また、青森県では、平成28年に本病に対する基幹防除薬剤であるエルゴステロール生合成阻害(EBI)剤に対する耐性菌の出現が確認され、平成29年から本病に対するEBI剤の使用が全面的に禁止された。道内ではEBI剤感受性低下の事例は確認されていないが、EBI剤も含め同一系統薬剤の連用は避け、他系統薬剤とのローテーション散布を心懸ける。
3)りんごの腐らん病
   腐らん病は、りんごの最重要病害であり、主幹、主枝および枝梢部に発生して胴枯れ、枝枯れ症状を引き起こす。本病は、これまでも多くの園地で発生がみられているが、平成28年は発生面積率64.3%(平年:44.6%)、被害面積率28.8%(平年:15.8%)と、ともに増加した。この原因として、近年の多発傾向で感染源密度が高まっていること、平成23年の凍害による樹体損傷、平成27年の多収によるなり疲れと春先の急激な温度低下による凍害などの影響に加え、主要品種「つがる」が導入されてから年月が経ち、樹齢が高まっていることなどが考えられる。対策としては、適切な剪定、施肥、土壌管理、干ばつ防止のための草生管理、適正な着果量の確保など、基本管理の徹底が最も重要である。また、り病枝の切り落とし、病患部の削り取りを行い、切り取った枝や削り取った樹皮は園外に持ち出して適正に処分する、傷口にはゆ合剤を塗布することも重要である。せん定などによる傷も感染口となるので、ゆ合剤を塗布するとともに薬剤の散布も行い、本病に感染しないよう管理を行う。

4.平成28年に新たに発生を認めた病害虫
 平成28年に新たに発生を認めた病害虫は9病害虫(病害8、害虫1)である。
 (1)ばれいしょの黒あし病(病原の追加・国内新発生):これまでの3種に加え新たな病原菌を確認。
 (2)キャベツの株腐病(病原の追加):病原菌にリゾクトニア・ソラニの新たな菌糸融合群を追加。
 (3)レタスのチューリップヒゲナガアブラムシ(新寄主):ウイルス病を媒介するので注意。
 (4)ほうれんそうのべと病(新レースの出現):レース1~8に抵抗性の「カイト」で発生。
 (5)ほうれんそうの白斑病(病原の変更・追加):病原菌の分類体系再検討による種名変更。
 (6)ネギの腐敗病(新発生):育苗中に発生。葉に3-5mmの不整形病斑および水浸状の腐敗。
 (7)リーキの葉枯病(病原の変更):病原菌の分類体系再検討による種名変更。
 (8)トルコギキョウの炭そ病(新発生):定植直後の2-3対目の葉に淡褐色円形の陥没病斑。
 (9)ぶどうの晩腐病(病原の追加・国内新発生) :病原菌の分類体系再検討による種名変更。
    そのなかに、国内で初めて確認されたC. viniferum が含まれていた。

 特に注意を要する病害虫および新発生病害虫の詳細な情報については、北海道病害虫防除所のホームページに掲載していますので、そちらをご覧下さい。

詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp

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