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国産初! サラダやスープに適した赤いんげんまめ「十育S3号」

十勝農業試験場 研究部 豆類グループ

1.背  景
 北海道において、いんげんまめは9,550ha(平成27年)の栽培面積があり、その中で金時類はおよそ2/3を占めている。金時類は、豆類の中でも成熟期が早いことから、秋まき小麦の前作物として栽培されるなど、輪作体系上重要な作物である。しかし、金時類の主な用途である加糖煮豆や甘納豆の需要は近年停滞傾向にある。
 一方、食の多様化と健康志向の高まりとともに、豆類の消費形態が変化しており、従来の加糖食品ではなく、サラダやスープ・煮込み料理の具材など、洋風料理においていんげんまめの消費が増加している。これら用途では、加工後も濃い赤色を保ち、皮切れ・煮くずれ粒の発生が少ないことが求められるため、これまでの北海道産金時類は不向きで海外産レッドキドニーが使用されているが、国内産原料に対する要望の高まりから、実需者からは本用途向けに加工適性の高い北海道産赤いんげんまめ原料の供給が望まれてきた。

2.育成経過
 「十育S3号」は、煮熟後も種皮色が赤く残り、皮切れや煮くずれ粒が少ないことで、サラダや煮込み料理などの洋風料理に対し優れた加工適性を有する赤いんげんまめ品種の育成を目標とし、十勝農試において、加工適性の高い海外遺伝資源「Montcalm 023」を母、「十系B394号」を父として人工交配を行い、以降選抜・固定を図ってきた。なお、F9世代以降、道内の現地ほ場において適応性の確認等を行うとともに、加工適性の確認を行った。

3.特性の概要
 開花期及び成熟期は「大正金時」とほぼ同日である。成熟期における倒伏程度は「大正金時」と同程度で、葉落ち良否はやや優る。子実重は「大正金時」と同等である。炭そ病(レース7,38,81)に抵抗性を持つが、黄化病抵抗性は“やや弱”である。子実の形は「大正金時」と異なる“長楕円体”で、百粒重は軽い。種皮色は「大正金時」とやや異なるが、同じ“赤紫”に分類される。
 「大正金時」に比べ、煮熟後の粒色は濃い赤色を保ち、皮切れ及び煮くずれ粒が少なく、製品試作試験において、洋風料理等への加工適性は海外産レッドキドニーと同等と評価された。

4.普及態度
 「十育S3号」を北海道における新たな赤いんげんまめ品種として普及することにより、洋風料理向け国産豆類の需要拡大と、北海道の豆類生産者の輪作体系の安定に寄与する。
 1)普及見込み地帯:北海道のいんげんまめ作付け地帯
 2)普及見込み面積:300ha
 3)栽培上の注意事項:
  (1 )色流れ粒は発生しないが、成熟期前後の気象条件により、「大正金時」と同じく腐敗粒、発芽粒等が生じる恐れがあるため、適期収穫に努める。
  (2 )インゲンマメ炭そ病に抵抗性を持つが、その他の病害には従来の品種と同様に罹病するため、適切な防除に努める。







詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp

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