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遠い日常、残る爪痕 台風10号災害1カ月

帯広駅南口に用意されたトマム行きのJR代行バスに乗り込む利用者(30日午前9時50分ごろ、新井拓海撮影)

 台風10号による大雨災害から1カ月。十勝管内には今も爪痕が色濃く残り、住民生活は不便を強いられている。通行止め、運休が続く国道274号・日勝峠とJR特急は再開のめどが立たず、物流や観光面でも影響が続いている。河川氾濫で自宅が被災し公営住宅などで暮らす人も多く、基幹の農業は広範囲に被害を受けて今後に不安を残す。そんな中、一刻も早く日常を取り戻そうと、復旧は徐々に進みつつある。

◆住宅・水
仮住まい生活に不安

 管内に開設された避難所は、21日の清水町保健福祉センターを最後に全て閉鎖された。ただ、全壊や浸水、道路寸断などで自宅に戻れず、公営住宅に入居したり、親類宅で応急的な生活を余儀なくされている住民がまだ多くいる。

 清水町では公営住宅に14世帯、親類宅と社宅に各1世帯が身を寄せ、新得町は6世帯10人、芽室町は4世帯11人が公営住宅に入居した。

 ペケレベツ川沿いの家が全壊し、家族3人で清水町の公営住宅に入った砂田秀雄さん(69)は「2年前にリフォームしたばかりの家だった。年金生活でまた建てるのは大変だが、一生ここで住むのはつらい。先が見えれば」と話す。

 営農用水は取水施設などが被害を受け、清水、芽室両町の約290世帯で断水が続いているが、両町は11月中の通水に向け復旧工事を進めている。鹿追町然別湖畔一帯の断水は復旧のめどが立っていない。

◆交通
日勝峠、JR 依然寸断

 1日に再開した道東道は占冠インターチェンジ(IC)-音更帯広IC間で通行無料措置が続く。その影響もあり、無料区間の通行量は増加。17~19日の3連休の1日平均交通量(無料区間、上下線計)は前年比約1・2倍となった。

 管内で根室線の3つの橋梁(きょうりょう)が流失したJRは、札幌-帯広間の特急運休が続き、8日から札幌-釧路間で1日3往復の臨時列車と代行バスを運行。帯広駅の佐々木大輔駅長は「徐々に認知されているが、利用人数は特急の1、2割ほど。利用者が多い12月中の復旧を目指す」と話す。

 10月1日からは1日1往復、新得-トマム間の代行バスも運行する。

 帯広と札幌を結ぶ都市間バスはJR特急運休に伴い2台体制で運行。週末の便や、札幌への出張客などが利用する平日午前の便はほぼ満席の状態が続く。

◆農業
被害300億円、豆類5119ヘクタール

 道農政部が27日現在でまとめた管内の農業関係の被害額は299億8400万円。天候不順による生育遅れに加えてダブルパンチとなった。

 18市町村から被害報告があり、圃(ほ)場の冠水や滞水、土砂流入、表土流失などの面積は計2万6293ヘクタール、農作物の被害額は184億2200万円に上った。豆類の5119ヘクタールが最も多く、スイートコーンは3357ヘクタールと作付けの4分の3が倒伏したり、加工場被災で出荷できなかった。ニワトリや豚などの家畜も水死し、停電の影響で生乳133トンが廃棄された。

 十勝地区農協組合長会は「この気象災害は前例のない異常事態」とし、現行制度で対応できない被害への支援を求めている。

◆観光
集客減 長引く

 台風は十勝観光も直撃した。帯広ホテル旅館組合(後藤健二組合長、30施設)によると、加盟する帯広市内15施設では8月末から9月にかけ、約5000件7800人分のキャンセルがあった。十勝川温泉(音更)の5施設でも9月上旬だけでキャンセル数が約4000件に及んだ。

 後藤組合長は「シルバーウイークも部屋は何とか埋まったが、人数が回復しきれず、市内施設の売り上げは平均で前年より10%減。正直きつい」と話す。

 市内の真鍋庭園では台風後、2週間ほど入場料を値下げして対応。来場者数も前年比1割減となったことで、台風関連の損害額は100万円に達する見込み。同社は「土地勘のない人がテレビ報道を見て、帯広全域が浸水したのではと考えて問い合わせをしてくる」と影響を語っている。

◆物流
トラックで代替

 JR不通により、台風直後は十勝管内で物流停滞が見られ、週刊誌などが3日ほど届かなかった。現在はトラックによる代替輸送で通常に戻ったが、ザ・本屋さん(帯広)の高橋智信社長は「通常でも週刊誌は東京より2日遅れ。5日後となると、新鮮みも薄れ、売り上げにも影響した」と話す。

 JRは農畜産物などのコンテナ貨物を帯広-札幌間でトラック代行輸送をしたり、釧路港から青森県八戸港や東京港へ船舶輸送したりして対応。JR貨物北海道支社は「輸送能力は半減。11月にかけてジャガイモやタマネギなどが最盛期を迎えるが当面は現状対応しかない」としている。



東大雪荘あす再開
 【新得】台風による大雨被害で長期休業していたトムラウシ温泉国民宿舎東大雪荘(町屈足トムラウシ)が10月1日、営業を再開する。3日までは日帰り入浴のみ受け入れる。

 道道忠別清水線が開通し電気・電話回線も復旧したため、再開の見通しが立った。宿泊受け付けは4日から。

 トムラウシ山短縮登山口は今後も数カ月間、通行止めが続く見込み。東大雪荘は「これから紅葉が良くなる時期。道路状況に気を付けて足を運んでほしい」と呼び掛けている。

 日帰り入浴は正午~午後8時。問い合わせは同温泉(0156・65・3021)へ。(小寺泰介)

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