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ヘドロ臭の中 黙々と汗 災害ボランティアルポ 清水

スコップを手に、佐々木さん宅の庭の土砂を取り除くボランティア 

自然災害の非情さ痛感
 【清水】台風10号の被災を受け、町社会福祉協議会(社協)が4日に立ち上げた災害ボランティアセンターは、給水や泥の除去に取り組むなど町民にはなくてはならない存在だ。町内ではいまも一部で断水が続き、足腰の不自由なお年寄りも少なくない。「蛇口を開くと水が出る」「家の庭で花を楽しむ」。町民の日常を取り戻そうと奮起するボランティアの一員として、活動に参加した。
(安倍諒)

 13日午前、同センターに到着しボランティア登録用紙を見ると、すでに名前がずらり並んでいた。「週末は100人以上の方が来ます」と同社協職員の北浜宏樹さん。この日は約35人が各班に分かれ、給水支援と泥出し作業に向かった。

 記者はまず給水支援を担当。バンにつなげた台車に2リットル6本入りの飲料水ケース数十箱を積み込み、1人暮らしの高齢者が多いとされる清和地区へ。

清和地区の住民に飲料水を届ける記者(右)

 同地区の鳥海勝子さん(72)は運転免許証を持っておらず、自宅から約3キロメートル離れた給水所まで、毎日4往復を自転車で通っていた。記者らが水を届けると、「これで洗濯ができる。皿洗いにも使いたい。キッチンペーパーで拭くだけだったから」と声を弾ませ、「ボランティアの方々には本当に頭が下がる」と感謝した。

 ただ、世帯ごとに要望はさまざまで、全てに迅速に対応できるわけではない。「もう数ケース欲しい」「生活用水が足りていない」。玄関横の雨水をためたバケツが、断水の厳しい現状を物語る。

 同地区町内会長の菅原八百一さん(73)は「トイレで浴槽の水がなくなる。断水がこんなに大変とは思わなかった」と話す。

 午後からは泥の除去作業班に加わった。訪ねたのは市街地の佐々木正さん(78)と英子さん(72)夫妻宅。ペケレベツ川の氾濫で大量の土砂が庭に流入。ツガザクラなど高山植物で彩られていた花壇は跡形もなく、真っ茶色の土で覆われている。

 土が硬くて思うようにスコップが進まない。ヘドロの悪臭も鼻をつく。掘り進めると土が黒色に変わり、底が見えた。土砂が約50センチは堆積したことが分かる。掘った土を袋に入れては外に運び出す。汗が噴き出す。前の路上には無数の土のう袋が積み上がった。

 ボランティアの一人で町内で宣教師をしている金在蘭さん(45)は「寒くなる前までに何とか復旧させたい」と手を動かす。東日本大震災の際も岩手県に出向いた。「逆の立場なら、こんな光景を毎日見るのはつらいから」

 被災地域には札幌からの福祉関係者や、旅行を中断した大阪の会社員、高校生ら、生まれも世代も異なる人たちが集まった。疲労困憊(こんぱい)の記者の横で、作業終了後もスコップや一輪車を黙々と洗う姿に、敬意を抱かずにはいられなかった。

 ボランティアを通じ、自然災害の非情さを思わずにはいられなかった。水を届けた帰り際、「本当にすまないね」と何度も頭を下げるおばあさんの姿が頭から離れない。

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