豊頃のハルニレ 耐えた 台風に負けない「希望の木」
「幹裂ける」ベルトで固定
【豊頃】推定樹齢150年。8月の相次ぐ台風で水に漬かるなどした町の観光名所・ハルニレの木が、傷つきながらも必死に生きている。台風後に訪れた観光客らからは「よく頑張った」「試練の象徴」とメッセージが寄せられ、甚大な被害が出た十勝を勇気づける「希望の木」となっている。
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ハルニレの木はもともと幹が裂けかけていたが、今回の台風7、11、9号でさらに傷みが広がった。町は「このままでは台風10号に耐えられない」(企画課)として、8月30日に結束ベルトを付け、割れ目が広がらないよう固定するなど応急措置を施した。
翌31日、十勝川が増水。茂岩の水位観測地点では同日午前11時、水位がこれまでの最高値10・08メートルを超える12・68メートルに達した。ハルニレの木は堤防内の同川左岸河川敷にあり、木の半分近くが水に漬かり、上流からの流木に当たりながらも耐えた。
ハルニレの木は2本の木が付いた合体木。扇形の枝ぶりが美しく素晴らしい景観をつくっているとして1986年、町指定の文化財となった。町によると、樹高17~18メートル、枝を含めた幅は23メートル。町の観光PRでは「雨の日も風の日も決して離れることなく寄り添ってきた2本の木は、まるで永遠の愛を誓い合った恋人たちのよう」と紹介。町のカントリーサインにも使われている。
台風で傷付き、困難を乗り越えながらも生きる姿が観光客を引き付ける。近くに立つ「はるにれ休憩所」のノートには、増水で水が引かない今月1日に「水中から立派に立っていました。試練の象徴か」、4日には「無事でよかった(中略)よくがんばってくれました」、7日には「どんなになっているか心配したが、変わらずで安心」などと記されている。
町は木を延命する維持・管理に2000年から取り組んでおり、今回も造園会社の専門家に診断を受けて対策を練る。
文化財を管理する町教委の菅原裕一教育長は「ハルニレの木を見るために何万人も足を運んできた。対策があるなら何とかしなければならない」と話す。(関坂典生)