病気に強く作りやすい! 早生小豆「十育164号」
十勝農試 研究部 豆類グループ
北見農試 研究部 地域技術グループ
上川農試 研究部 生産環境グループ
1.背 景
道東地方は、全道の小豆栽培面積のおよそ7割を占める主産地である。道東の山麓・沿海部では、無霜期間が短いことから、成熟期の早い「サホロショウズ」及び「きたろまん」が栽培されている。「サホロショウズ」(平成元年育成)は、優良品種の中で最も早生であるが、土壌病害抵抗性を持たないため、早生の抵抗性品種が要望されていた。「きたろまん」(平成17年育成)は、土壌病害抵抗性で、「サホロショウズ」と比べやや多収であるが、成熟期が遅く、特に冷涼な道東の山麓・沿海部において霜害を受ける危険性がある。また、温暖年には、両品種で主茎長が伸びて倒伏する事例があり、減収や品質・作業性の低下が問題となっている。一方、道央・道北地方では、茎疫病の発生が多く、早生の茎疫病抵抗性品種に対する要望がある。
2.育成経過
「十育164号」は、十勝農試において、落葉病・茎疫病(レース1)・萎凋病抵抗性で成熟期“早の晩”の「きたろまん」を母、落葉病・茎疫病(レース1、3、4)・萎凋病抵抗性で成熟期“中の早”の「十系971号」を父として人工交配を行い、以降選抜・固定により育成したものである。なお、F6世代以降、北見農試及びオホーツク地域向け現地選抜ほ場において、オホーツク地域向けの特性について選抜及び適応性の確認を行った。F8世代では、上川農試において茎疫病レース3、4抵抗性を確認し選抜した。
3.特性の概要
「十育164号」は、成熟期は「サホロショウズ」と同等で、「きたろまん」より早い。倒伏程度は両品種より小さく、子実重は「サホロショウズ」以上である。落葉病、茎疫病(レース1、3、4)、萎凋病に抵抗性を持ち、低温抵抗性は“中”である。子実の形及び大きさは両品種と同じ“円筒”及び“中の大”で、種皮色は「サホロショウズ」よりやや淡く、「きたろまん」と同じ“淡赤”である。外観品質及び加工適性は両品種と同
等である。
4.普及態度
「十育164号」を「サホロショウズ」のすべてと、霜害の危険性が高い地域の「きたろまん」に置き換えて普及することにより、安定栽培が可能となり、北海道における小豆の生産振興に寄与できる。
1 )普及見込み地帯:全道の小豆栽培地帯のうち、早生種栽培地帯(Ⅰ)、早・中生種栽培地帯(Ⅱ)及びこれに準ずる地帯
2)普及見込み面積:1,500ha
3)栽培上の注意事項:落葉病、茎疫病、萎凋病に抵抗性を持つが、栽培に当たっては適正な輪作を守る。
※ 本品種の育成に当たっては、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業(平成23~25年)及び農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(平成26~27年)の助成を受けた。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場 豆類グループ
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro. or. jp