線虫とそうか病に強い!加工用ばれいしょ「ぽろしり(CP07)」
北見農試 研究部 作物育種グループ・生産環境グループ
中央農試 作物開発部 作物グループ・病虫部 予察診断グループ
上川農試 研究部 地域技術グループ、道南農試 研究部 地域技術グループ
十勝農試 研究部 地域技術グループ、北海道種馬鈴しょ協議会
1.背景と目的
加工用の主力品種「トヨシロ」は、平成24年に7,127ha 作付けされており、ポテトチップ用としてだけでなく、ポテト系スナック製品にも使用されている。しかし、ジャガイモシストセンチュウおよびそうか病に抵抗性がないという欠点を持つ。
ジャガイモシストセンチュウは大幅な減収をもたらす懸念があり、安定生産上の大きな問題となっている。そうか病は、被害が拡大すると原料の不良率が高まり、メーカーによる買い入れ単価の低下を招く。両病害虫はともに一度圃場に侵入すると根絶が困難となるため、抵抗性品種の栽培が最も効果的な対策である。
これらのことから、両病害虫に対する抵抗性を兼ね備えた加工用品種が求められてきた。
2.育成経過
「ぽろしり」はジャガイモシストセンチュウ抵抗性およびそうか病抵抗性を持つ油加工(ポテトチップ)用品種の育成を目標として、平成15年にカルビーポテト株式会社において「ノーキングラセット」を母、「Pike」を父として人工交配を行い、その後選抜・育成した品種である。
3.特性概要
1 )枯ちょう期は、「トヨシロ」よりやや遅い中生である。でん粉価はやや低いが、規格内いも重はやや多い(表1)。
2 )ジャガイモシストセンチュウ抵抗性と“やや強”程度のそうか病抵抗性を併せ持つ。塊茎腐敗抵抗性は“弱”で、「トヨシロ」よりやや弱い(表2)。
3 )塊茎の形、皮色および肉色はそれぞれ「トヨシロ」と同様の“卵形”、“淡ベージュ”、“白”である。塊茎の目の深さは「トヨシロ」より浅い(写真1)。
4 )塊茎の生理障害について、褐色心腐は「トヨシロ」並の“微”、中心空洞は「トヨシロ」より少ない“無”、二次成長は「トヨシロ」並の“微”である(表2)。
5)「トヨシロ」と同様にポテトチップおよびスナック加工適性がある(表3、4)。
4.普及態度
「ぽろしり」をジャガイモシストセンチュウおよびそうか病発生地域の「トヨシロ」の一部に置き換えて普及することにより、加工原料の安定供給が可能となる。
1)普及見込み地帯:北海道の加工用ばれいしょ栽培地帯
2)普及見込み面積:500ha(平成30年)
3 )栽培上の注意事項:①でん粉価の向上を図るため、早植え、浴光催芽などの基本技術を励行し、完熟塊茎の生産に努める。②疫病菌による塊茎腐敗抵抗性が“弱”であるので、塊茎腐敗に効果のある薬剤を使用するなど疫病防除を適切に行う。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場 地域技術グループ
電話(0155) 62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp