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シストセンチュウに強くて、よくとれる! でん粉用ばれいしょ「北育20号」

北見農試 研究部 作物育種グループ

1.はじめに
北海道における平成24年度のばれいしょの作付面積は53,400haで、このうち約3割をでん粉原料用が占めている。しかし、近年作付面積の減少と低収により、ばれいしょでん粉の生産量はここ数年低迷しており、でん粉実需者からは安定供給への懸念が示されている。
でん粉原料用の主力品種「コナフブキ」は、平成24年に13,562ha作付されているが、ジャガイモシストセンチュウ(以下、PCN)抵抗性を持っていないことから、安定生産上の大きな問題となっている。既存のPCN抵抗性品種は、枯ちょう期の収量、塊茎の早期肥大性などが「コナフブキ」より劣ることから、広く普及していないのが実態である。これらのことから、多収でPCN抵抗性のでん粉原料用ばれいしょ品種が切望されてきた。

2.育成経過
「北育20号」は、多収でPCN抵抗性の「根育38号」を母、北見農業試験場で育成したでん粉高品質系統「K99009-4」を父として、平成15年に人工交配を行い、その後選抜・育成した品種である。

3.特性の概要
 1)枯ちょう期は、「コナフブキ」よりやや遅い晩生である。地上部の草高は「コナフブキ」よりやや高い(表1)。耐倒伏性は「コナフブキ」より強い。塊茎の形は"円形"、皮色は"黄"、肉色は"淡黄"である(写真1)。
 2)でん粉価は「コナフブキ」よりやや低いが、上いも重とでん粉重は「コナフブキ」より多い(表1)。早期肥大性は「コナフブキ」並である(表2)。
 3)PCN抵抗性とYモザイク病抵抗性を併せ持つ。疫病抵抗性は「コナフブキ」並の"弱"である。塊茎腐敗抵抗性は"ごく弱"で、「コナフブキ」より弱い。
 4)でん粉特性は、粒子の大きさは「コナフブキ」より大きく、離水率は「コナフブキ」並、リン含量は「コナフブキ」よりやや低い。白度は「コナフブキ」並である(表3)。実需者によるでん粉品質評価は、ゲル物性がやや硬い傾向があるが、一般的なばれいしょでん粉の範疇である(図1)。

4.普及態度
「北育20号」を、PCN発生地域の「コナフブキ」の一部に置き換えて普及することにより、北海道産ばれいしょでん粉の安定生産に寄与できる。
 1)普及見込み地帯:北海道のでん粉原料用ばれいしょ栽培地帯
 2)普及見込み面積:5,000ha
 3)栽培上の注意事項:疫病菌による塊茎腐敗に対する抵抗性が "ごく弱"であるので、疫病防除を適切に行うとともに、塊茎腐敗に効果のある薬剤の使用、排水不良圃場での栽培を避けるなどの対策を講じる。

--【用語の解説】-----------------------------------
ジャガイモシストセンチュウ(PCN):ばれいしょの根に寄生する害虫で、大幅な収量低下をもたらす。薬剤による防除は困難である。抵抗性品種の栽培は減収を回避でき、土壌中の線虫密度を低下させる効果がある
でん粉特性:
  ・でん粉粒子の大きさ:大きいほうが好ましいが、「コナフブキ」並であれば問題ない。
  ・離水率:練り物製品の加工適性等に関連。低い方が好ましい。
  ・リン含量:低含量のほうが好ましい。
  ・白度:高い方が好ましいが、「コナフブキ」並であれば問題ない。






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道総研十勝農業試験場 地域技術グループ
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp

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