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インサイド 強い危機感、安全対策に腐心 大樹ロケット打ち上げ実験成功

【大樹】道産ロケット「CAMUI(カムイ)ハイブリッドロケット」の打ち上げ実験が3日午前、町多目的航空公園北側原野(町美成)で行われ、成功した。昨年12月の実験では寒さのためパラシュートが開かず、人のいた司令室にロケットが飛び込む失敗に終わったが、耐寒性を向上させ、落下危険区域を拡大することなどで安全を確保し、実験に臨んだ。失敗は許されない強い危機感の中、ロケットは無事パラシュートを開き、誰もいない前方に着地した。前回の教訓を生かし、技術を確立、今後より高度な実験に挑戦するための一歩を踏み出した。(北雅貴)

カムイロケットはNPO法人北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC)が主体となり、実験を行っている。GPS(全地球測位システム)が取り付けられた空き缶型の超小型衛星(CANSAT)を搭載した荷物部分(ペイロード)と、機体の2区分で構成。発射後、空中で切り離され、機体の内側に取り付けられたパラシュートが押し出されて開く仕組みとなっている。
前回は寒さで分離装置の指令回路が作動せず、パラシュートが開かなかった。今回は大樹での厳しい寒さを想定し、道立工業試験場で氷点下40度近くまで下げて実験。回数は100回余りに及んだという。
「技術的な失敗は実験につきもの」としていた関係者が、最も危機感を募らせたのが安全対策面。落下危険区域を後方にまで拡大し、バラバラだった打ち上げ班と保安班の情報も永田晴紀HASTIC理事に集約。どちらかに異常があれば、準備を止めるシステムを設けた。
背水の陣で臨んだ今回の実験。現場にはこれまでにない厳しい空気が漂った。注意事項を載せた用紙を初めて用意、一般見学者や報道陣に手渡し、これまで特に設けていなかった記者席を発射点から130メートル後方に設置した。実験にかかわったカムイスペースワークス(赤平市)の植松努社長は「やれることはすべてやった。打ち上げから着地まで、心臓がつぶれる思いで見ていた」と深いため息をついた。
打ち上げ保安責任者の永田理事(北大大学院教授)は「安全対策は確立できた。今後はより高度なロケット開発を進めることに集中できる」と、技術開発に傾注できる態勢が整ったことを喜んだ。8月以降、技術開発要素を盛り込んだ本格的なロケットを飛ばす予定という。
伊藤献一HASTIC副理事長は「これまでは技術ばかりに目がいき、肝心なものがおろそかになっていた。前回は残念な結果だったが、無駄ではなかった」と喜び、伏見悦夫町長は「ロケット開発の夢が途切れなくて良かった。町として今後も支援していきたい」と話す。実用化まで課題はまだ残るとされるが、大樹の空を道産ロケットが飛び、目的を達成できたとき、前回の失敗も語り草となるのかもしれない。

カムイロケット
推進剤にプラスチックなど固体燃料と液体酸化剤を組み合わせ、火薬類を使用しないため、管理コストを大幅に削減できるなど安全で従来の小型ロケットの1割程度の低価格で運用できる。機体は再使用可能。成層圏のオゾン層観測など気象観測用として期待されている。

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