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活用広がる大樹町多目的航空公園 巨大気球十勝の大空を飛翔

【大樹】独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA、本部東京)は新年度、大樹町で科学観測用の無人大気球を飛ばす実験を始める。町多目的航空公園では大気球指令管制棟の工事が進んでおり、今月末の完成が待たれている。JAXA宇宙科学研究本部の吉田哲也大気球観測センター長は「大気球を安全に運用し、研究を推進したい。実験を通じ、多くの住民に科学への興味と理解を深めてもらえたら」と話している。(北雅貴)

JAXAが研究している大気球は、人工衛星やロケットと並び、科学観測と宇宙工学実験に使われる重要な飛翔体の1つに位置付けられている。実験では地上付近で観測できない紫外線や赤外線、宇宙線などを観測し、天文学や宇宙線物理学の研究に役立てる。また、地球環境を守る上でオゾンホールや酸性雨の直接原因となる物質の採取、測定を行い、年変化のデータも蓄積する。
従来の実験は三陸大気球観測所(岩手県大船渡市)で行ってきた。1971年の開所以来、およそ400機の大気球を高度30−50キロ付近の上空に打ち上げてきた。2002年5月には6万立方メートルの気球に重量3キログラムの観測器を搭載、気球の世界最高高度である53・0キロを達成した。
一方、この30年間ほどで観測機器や大気球の大型化が進み、気球を打ち上げる広い放球場が必要に。気球の上昇経路には民家や道路、鉄道などが極力存在しない環境が望ましく、大樹町はこれらの条件を満たす。同公園にはJAXAが設置した飛行船格納庫も整備されている。
吉田センター長は「上空に放たれた気球がただちに太平洋上を飛ぶため、安全を確保できるのが大きい。風などの気象条件も実験に適している」と力を込める。
大樹町は85年に航空宇宙産業基地構想を掲げ、JAXAをはじめ、NPO法人北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC)、大学などの実験を受け入れてきた。昨年12月、同公園で小型無人飛行機の画像伝送飛行実験を行ったJAXAの穂積弘毅主任研究員は「町役場や大樹漁協など温かい協力のおかげで、実験を円滑に進められた」と振り返る。
町での実験は5月中旬からと8月下旬からの年2回で、それぞれ約1カ月間を予定。毎回、大気球と観測機器の関係者など40−50人が来町、滞在する。伏見悦夫町長は「長年取り組んできた活動の成果が実った。宇宙の町として、大きなインパクトになる」と感激している。

/道工大の佐鳥新・准教授に聞く/
/人工衛星「大樹1号」打ち上げ準備進む/「宇宙開発通じ北海道発信」/
北海道発の人工衛星「大樹1号」は、早ければ2011年度の打ち上げを目指して開発が進む。ハイビジョン並みの高画質となるハイパースペクトルカメラを搭載、レーザー通信で地上に画像を送り、インターネットを通して世界中に「宇宙の視点」を配信する。将来的には農業分野への活用も期待される。開発の中心を担っている、北海道工業大学の佐鳥新・准教授に現在の取り組みを聞いた。(末次一郎)
□−−−−−□大樹1号の開発に向け、佐鳥准教授らは現在、新たな体制づくりを進めている。大きさが30立方メートルで重さ15−25キロ程度と、06年に打ち上げた超小型衛星「HIT−SAT(ヒットサット)」より大型になるため、「新たな技術を持った人材も必要。首都圏などで交渉を進めている」という。
組織を固めると同時に2、3月ごろから概念設計に入る予定。さらに大がかりなレーザー通信による衛星の自動追尾実験なども計画している。
「新たな通信機などの部品開発が進み、CAMUI(カムイ)ロケットなどとスケジュールが合えば、大樹でも試験を行いたい」という方針だ。
「大樹」の名称は「北海道発の衛星にふさわしい名前」として命名された。佐鳥准教授は「ロケットと衛星の両方を開発しているのは国内でも珍しい。その特徴を生かし、北海道から声を上げ、全国に呼び掛けていくことが重要。宇宙開発を通して北海道を発信していきたい」と意欲を見せている。

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