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実験失敗、テント破り落下 大樹・航空公園 カムイロケットパラシュート開かず

【大樹】NPO法人北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC)などは8日午前、大樹町多目的航空公園北側原野で「CAMUI(カムイ)ハイブリッドロケット」の打ち上げ実験を行った。高度1キロに到達した機体はパラシュートが開かずそのまま落下、司令室のテントを突き破って地面にめりこみ、失敗に終わった。テント内では8人が作業していたが、けが人はいなかった。予定されていた残り2回の打ち上げは中止された。打ち上げ管理責任者の伊藤献一HASTIC副理事長は「想定外の出来事だった。危険な場面をつくり、大変申し訳なく思う」と無念そうに話した。(北雅貴)

町内での打ち上げ実験は8回目となるが、パラシュートの切り離しに失敗したのは初めて。
今回は昨年に続き、HASTICが公立はこだて未来大学の依頼を受けて実施。ロケットには同大学の3年生の学生が製作した500ミリ缶サイズの超小型衛星(CANSAT)を搭載し、全長2・9メートル、重量21キロ。実験ではCANSATが途中で切り離され、自律制御された布製の翼のパラフォイルを使って上空を滑空する予定だった。
試験はほぼ無風状態の中、午前7時から行われ、勢いよく飛び出した機体は数分後にビニール製のテント内に落下した。
同10時に町多目的航空公園で記者会見した伊藤副理事長は「学生の研究の成果に応えられず申し訳ない。司令室の場所や距離を再考し、今後につなげたい」と語った。
同規模の打ち上げ実験は来年3月に行う予定。

カムイロケット固体燃料(プラスチックなど)と液体酸化剤を組み合わせたロケットエンジンで無火薬式で飛ばす。低価格で安全な小型ハイブリッドロケットとして、永田晴紀北大大学院教授が理事を務めるHASTICが開発。機体は再使用可能で、従来の小型固体ロケットに比較して打ち上げ単価を10%以下に抑えられるという。成層圏のオゾン層観測など気象観測用として期待されている。

/けが人なし「安全に甘えあった」/
「これまでの打ち上げ試験と地上での実験で一度も失敗がなかったケースで非常に驚いている」。カムイの打ち上げ失敗はロケット開発の難しさと危険性を再認識させるものとなり、打ち上げ実施責任者のカムイスペースワークス(赤平市)の植松努社長は落胆の表情で話した。
機体落下の原因は、機体とペイロードと呼ばれる荷物部分を切り離すタイマーが作動せず、パラシュートを押し出すことができなかったため。予定では打ち上げの15秒後に分離させるようにタイマーが設定され、パラシュートが風を受けて速度を弱めながら周辺に落下するはずだった。「原因は電子部品と思われるが、今後、道工大で詳細に調べることになるだろう」(植松社長)という。
また、打ち上げたロケットが発射点から約25メートル離れた司令室に落ちたことに関係者は青ざめ、一時緊迫した空気が流れた。通常、ロケットの飛び出す方向の真後ろが最も安全とされているが、後方の見学者が見やすいように配慮し、発射点から横の位置に設置した。
記者会見で同じく実施責任者の永田晴紀北大大学院教授は「安全に対する甘えがあったと言われても仕方ない」と反省の言葉を述べ、今後の対策として「司令室の位置を徹底し、距離を50メートル近く取ることなどを考えたい」とした。(北雅貴)

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