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教職員の盗撮問題、現場に広がる波紋 公用端末も質劣り「やりづらくなった」

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 全国で相次ぐ教員による盗撮事件が社会的な問題となる中、道教委は9月、教職員が教室などに私用端末・スマートフォンを持ち込むことや撮影を禁止する通知を道内の各市町村教委に出した。教育現場での子どもの盗撮など性犯罪を防ぐ目的だ。ただ、学校行事や部活動、授業の記録など教員が児童生徒にレンズを向ける場面は多く、これまで多くの教員が私用スマホを活用してきた。十勝管内では学校ごとに公用端末の数などにばらつきがあり、現場からは「やりづらくなった」などと声が上がる。(小野寺俊之介、近藤周)

【アンケート】教職員のスマホ持ち込みに関して

 「保護者や子どもたちを不安にさせたくない」。十勝管内の小学校で学級担任を受け持つ30代男性教諭は、教員らが女子児童を盗撮した画像や動画をSNSのグループチャットで共有していた愛知の盗撮事件の報道翌日から、教室への私用スマホ・タブレットの持ち込みを自主的にやめた。

 男性教諭は、子どもたちの学校での様子を保護者に知らせようと、週1回ペースで学級通信を発行。行事の時はもちろん、日常の学校生活でも「思いがけず見せる成長や表情がある」と私物のスマホで撮影し、通信に掲載してきた。

 通知が出て以降、男性教諭が勤務する小学校では学校用のカメラ30台やデジタル端末で撮影するようになった。カメラはデータを取り込む手間がかかり、貸与されている端末は起動が遅く、画質も悪い。「使い勝手は格段に下がった。一部の教員のせいで、現場の多くの先生が不便をこうむることに怒りを覚える」

 一方、部活動の現場でも「競技の指導がしにくくなった」との声が上がる。

 管内の中学校で部活動を指導する30代女性教諭は、私用スマホで選手の動きを動画撮影し、スロー再生を指導に生かしてきた。学校の公用カメラでも撮影することは可能だが、台数に限りがある上、「機能も乏しく、共有するにも画面が小さい」と嘆く。

 道教委の通知は写真データの管理方法にも踏み込んでいる。管内のある小学校の校長は「写真のコピー(複写)も禁止。写真の再利用には管理職を通さなければならないなど負担が増えた。通知の徹底をするため学校のマニュアル作成に取り組んでいるが、多くの制限があり、(写真撮影や活用などの)手軽さはなくなった」と肩を落とす。

 私物の端末・スマホの撮影や持ち込みを巡っては、文部科学省が7月、私的な端末で児童生徒を撮影しないよう全国の教育委員会に通知。道教委は9月、教職員が教室などに私用端末を持ち込むことを原則禁止とし、児童生徒の写真や動画撮影は学校所有のカメラなどで行うことや、撮影したデータを関係者以外が閲覧、使用できないようにする管理手順も示した。

 道教委ICT教育推進課の担当者は「公的な端末で、データをきちんと管理していれば児童生徒の撮影を禁止するものではない」とした上で、「あらぬ疑いがかからないように教員を守るルールでもある。必要に応じた公用端末などの更新は各市町村教委の判断に任せている」と説明する。

 教員が撮影する写真は従来、子どもの活動を保護者らに伝える役割を果たしてきた。善意の発信と児童生徒の安全安心をどう両立するかが問われている。

 十勝毎日新聞では「教職員の私用端末・スマホの持ち込みや使用」についてアンケートで意見を募集しています。


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