獣医師の小原さん、「いけだ牛」研究と成果発表で農林水産大臣賞 全国青年農業者会議
【池田】第63回全国青年農業者会議(全国農業青年クラブ連絡協議会主催)のプロジェクト発表(畜産経営部門)で、池田町の小原千佳さん(31)が最高位の農林水産大臣賞を受賞した。獣医師の小原さんは、採卵技術を活用した「いけだ牛」(褐毛和種)の自家育種体制の構築に向けた研究と成果を発表。「あか牛のいちファンとして、何とか次世代に残していきたいとの思いで日々取り組んでいる」と受賞を喜ぶ。(澤村真理子)
小原さんは旧利別小、池田中、とわの森三愛高、酪農学園大卒。帯広市内の繁殖クリニックを経て数年前に小原家畜診療所を開業した。実家の小原牧場で、両親とともに褐毛と黒毛合わせて260頭の和牛を管理する。
プロジェクト発表は、昨年12月の十勝大会で優秀賞、1月の北海道青年農業者会議で最優秀賞を受賞し、北海道代表として今月11、12日に都内で開かれた全国会議に臨んだ。畜産経営部門には4人が出場した。
発表テーマは「2024年問題を乗り越える-採卵技術が拓(ひら)く『いけだ牛』の未来」。トラック運転手の時間外労働規制が強化され、熊本県からの素牛の輸送コストが増加し、さらに素牛価格の高止まりが重なったことを背景に、採卵と受精卵移植の経験を生かした自家育種体制確立を目指す取り組みについて紹介した。
採卵技術による「いけだ牛」の素牛生産は道内では初の試みで、受胎率50%を目標に設定。結果、ドナー牛からの採卵は約8割が正常卵で、代理母牛の受胎率も目標を上回った。採卵技術の導入で、採卵コストの削減や収益増加、さらに優れた素牛を継続的に生産する体制が整うことで生産基盤の強化が期待される。今後は、複数のドナー牛で採卵を進める予定。
小原さんは「ブランドを存続するためには、外部要因に左右されず、地域内で持続可能な生産体制を構築することが不可欠。優秀な遺伝子を残し、良い牛が増えていけば」と話している。