日本サウナ学会トークセッション「サウナで地域活性化は可能なのか?」
11月26日に帯広市内の北海道ホテルで開催された日本サウナ学会の総会では、「サウナで地域活性化は可能なのか?」と題したトークセッションが行われた。「ととのう とっとり」などサウナを前面に打ち出す平井伸治鳥取県知事のほか、サウナ議連を立ち上げた国会議員も急きょ登壇。サウナが地域振興に果たす役割や、法整備・ガイドライン策定の必要性などについて持論を展開した。主な発言の内容を紹介する。(吉原慧、文中敬称略)
<登壇者>
・全国知事会長 鳥取県知事 平井伸治氏
・衆議院議員(立民) サウナ議連幹事長 寺田学氏
・内閣府地域活性化伝道師 木下斉氏
・日本サウナ学会理事 北海道ホテル社長 林克彦氏
・林氏 「冬の誘客聖地で驚き」
・平井氏「地場産業に波及効果」
・寺田氏「法整備しリスク管理」
・木下氏「健全な市場の拡大を」
フィンランド訪問
林 2018年にサウナの聖地・フィンランドを訪れ、確立されたサウナツーリズムに驚いた。日本で観光客が減少する11~4月に世界中から人が集まる。20~40代の若い世代が集まる様子を見て、十勝・道東でもやりたいと思った。
平井 コロナ禍以降、若い世代の地方への感心が増しており、移住・定住につながる動きもある。背景にはサウナなど自然と親しめることがあるのでは。サウナから他産業への波及効果もある。木材の産地でもある鳥取県ではサウナの開発や改修を地元業者が担い、仕事が生まれている。
木下 サウナは投資効果も高いのでは。
林 当初、北海道ホテルは一般的なドライサウナだったが、ロウリュやウォーリュ(壁の白樺に温泉を掛ける)を取り入れ、フィンランド式にしてから、客が6倍近く増えた。
平井 サウナに入って、水風呂に入って、大自然を感じて、星空を見る。地元では当たり前だったものが資源になって、県外客が多数来ている。
現状は行政の裁量
林 サウナ議連を作った理由は。
寺田 サウナに関連する議員の集まりは以前からあったが、昔からある浴場のサウナ、業者の意見を聞く受け皿だった。今はサウナ好きが急増して、個室サウナも無尽蔵に増えつつある。このままではゆくゆく事故が起こるかもしれないのでリスク管理をしなければと考えた。
また地域・観光の起爆剤としてサウナに期待したとき、法を整備する必要があると思った。
木下 各地域のプロジェクトを見ているが、サウナ設置の許可・不許可は行政の裁量次第だ。同じ内容の事業でも地域、場合によっては担当者によって判断が変わる。基準やエビデンスがない。
寺田 (サウナを規定する)公衆浴場法では、自治体の首長に判断を委ねている部分が多い。地域の実情に合わせて判断できる利点はあるが、今のサウナのあり方が公衆浴場法の立法趣旨にかなっているか、という問題がある。
我流の施設も散見
木下 公衆浴場法は銭湯など多くの人の入浴を想定しており、衛生的な基準を重視し、病気のまん延を防ぐのが第一の目的。現在の環境からは少し外れたルールもある。
一方で、人気のサウナ施設に行くと、安全管理上の不備や、我流のサウナが散見されることがある。ルールを定めることは重要。
林 屈足湖で行う「アヴァント」は3年掛けて安全性を検証し実施しているが、人気が出ると表面的なやり方だけまねをするところが出る。ただ、これでもし事故が起これば、「全体的に危ないから禁止」という風潮になりかねない。この辺の対応を含め、サウナ議連には期待したい。
木下 サウナに使うまき、水、外気浴をするときの景観。どれをとっても、サウナは都会より地方が圧倒的に有利になるコンテンツだ。
今成長中の市場でもあり、地域振興のためには活用していきたいコンテンツ。だからこそ健全に市場を広げていけるように、官民挙げて取り組んでいくことが大事になる。