「声失ってももう大丈夫」ALS当事者の佐藤さんが講演 音声ソフト完成
全身の筋肉が徐々に動かなくなる「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の当事者の佐藤仁美さん(42)=帯広=が、自身の声を残そうと取り組む「私の声プロジェクト」が進んでいる。すでに声の録音を終えた佐藤さんは、「声を失っても私はもう大丈夫」と語る。
患者会の日本ALS協会北海道支部(新屋保則会長)が5日に市内で開いた定期総会で、佐藤さんが講演した。
ALSは症状の進行や、人工呼吸器装着のための気管切開に伴い、発語が難しくなることが多い。2021年4月に発症した佐藤さんは、「声を残したい」とわずか半年で行動を起こした。
同プロジェクトは症状進行後のコミュニケーション法として、佐藤さんの声を録音し音声ソフトを導入する取り組み。講演で佐藤さんは、音声ソフト導入費約130万円の一部をクラウドファンディングで募ったことや、録音について振り返った。
手助けに感謝
音声ソフトよる自己紹介を会場で流した佐藤さんは、初めてその音声を聞いたときの感動を振り返りながら、「多くの手助けのおかげで音声ソフトを完成させることができた。感謝してもしきれない。声が続く限りこのような活動を続けていきたい」と話した。
若年性脳梗塞患者の支援などに取り組み、同プロジェクトを共に進めてきたNPO法人みんなのポラリス(帯広)の水口迅代表は、「難病になると患者は引きこもりがちになるが、仁美さんは情報発信にも積極的だった」とその行動力を賞賛した。
総会では他に、NPO法人和・ハーモニー音楽療法研究会によるコンサートや、帯広厚生病院の保前英希副院長によるALSの治療・療養に関する講演も行われた。(近藤周)