知床観光船事故で死亡 鈴木智也さん通夜 父親の悲しみ深く
知床半島沖で乗客乗員26人が乗っていた観光船「KAZU I(カズワン)」が沈没した事故で、乗船していた十勝出身で北見市在住の鈴木智也さん(22)の通夜が1日、実家のある帯広市内の公益社中央斎場でしめやかに営まれた。
智也さんの父親である剛さん(51)は葬儀の前日、十勝毎日新聞社の取材に対して「形がどうであれ、まずは戻ってきてくれたことに安堵(あんど)している。一番望んでいる親のところに帰ってきてくれたことを親孝行という形でとらえることしか今はできない」とつらい胸の内を明かした。
事故が発生した4月23日は、交際相手の20代女性(十勝出身)の誕生日だったこともあり、智也さんは船上でプロポーズをする予定だったという。2人は管内の高校に通う先輩と後輩の間柄で、ともに北見市で社会人生活を送っていた。
剛さんは「うちの息子が先に見つかったが、一緒に見つけてあげられなくて本当に悔しい。本当に無念。無念という言葉につきる」とし、「プロポーズされた彼女も早く見つけてあげて、2人で一緒になって安心してもらいたい」と言葉を絞り出した。
剛さんによると、30日に枕経(まくらぎょう)を行った僧侶は、掛ける言葉が見つからなかったようで、智也さんをただただ優しく抱いていたという。「周りの皆さんも、私たちの心情をわかっていただいている」と知人や親戚などに対して、感謝の意を述べた。
剛さんは観光船を運航していた「知床遊覧船」の桂田精一社長(58)に対し、「これからという若い人生を奪われたということに、憤りや恨み、つらみといった気持ちを通り越して何も考えることができない」とやりきれない感情をあらわにし、乗客については「他の家族を代表するわけではないが、全員が発見されることを祈るばかり」と話した。(山田夏航)