「絶対生き延びる。必ずまた帯広へ」 元JICA帯広研修員のウクライナ人ケイティーさん 避難生活語る
国際協力機構(JICA)の研修員として、2019年2~4月に帯広に滞在していたカトリーナ・チュザキーナさん(34)=通称ケイティーさん=が母国ウクライナで避難生活を続けている。ロシアの軍事侵攻から1週間が経過。日本時間3日夜、取材に応じたケイティーさんは「とても混乱している。ロシアは私たちを殺そうとしている」と惨状を嘆いている。
ケイティーさんは父親がロシア人、母親がウクライナ人のハーフで、ウクライナで生まれ育った。首都キエフ近郊の都市イルピンで公務員として食品安全管理などの仕事を担当するケイティーさんは、突然の侵攻に「現実とは思えなかった。そして、こんなに長く続くとは」と話す。
最初の3日間は住居が入っていた10階建ての建物の地下に避難していたが、危険を感じ、現在は同国西部を転々と移動している。目に映るのは、黒煙を上げて燃える建物やがれきの山。営業している店では食料などを購入できるが、手持ちの現金や衣料、薬は不足している。農家から無料で果物や野菜などをもらうこともある。
ウクライナの今 元JICA帯広研修員のケイティーさん 避難中に撮影
母親や友人と移動を続けているが、「車椅子の父親がヘルソンに残っているため、国外避難は考えていない」と涙ぐむ。南部の都市ヘルソンは2日、ロシア軍に制圧された。
現地では子どもや妊婦なども殺され、親を失った幼い子は市民ボランティアが世話している。その反面、ウクライナ人が傷ついたロシア兵を自宅に受け入れて手当するケースはあるという。ケイティーさんは「これはウクライナ人同士の争いではない。ロシアが一方的に攻撃し、人を殺している」と訴える。
ケイティーさんは3年前、JICA北海道国際センター(帯広)を拠点に日本の食品や農業などを学んだ。滞在中は各国の研修員と交流。冬のイベントや海などに出掛け、帯広川西小学校で子どもたちと触れ合ったこともあった。「私にとって、明るく幸せで素晴らしい思い出ばかり」と振り返る。
十勝の友人からは「どうかご無事で」「できることがあれば教えて」などとSNSでメッセージが届き、「本当にうれしい。アリガトゴザイマス」と日本語も交えて感謝する。ケイティーさんはフェイスブックやインスタグラムで現状や思いを発信。「Ekateryna Chuzhakina」で検索するとアカウントが出てくる。
ウクライナ非常事態庁は2日、侵攻で「民間人2000人以上が死亡した」と発表。犠牲者が増加の一途をたどる中、停戦交渉は進んでいない。「早く戦争が終わることを願うしかない」とケイティーさん。取材の最後には笑顔でピースサインをつくり、気丈に振る舞った。「私は絶対に生き延びる。そして必ずまた日本へ、帯広へ行きます」(松村智裕)
ウクライナの今 元JICA帯広研修員のケイティーさんからメッセージ