2度目の五輪、郷亜里砂「やりきった」
【中国・北京=北雅貴】「今は悔しさはない。すべてを出し切った結果。やりきった気持ちの方が大きい」。2度目の五輪を終えた郷亜里砂は、穏やかな表情だった。
課題としていたスタートは良かった。ただ、得意の中盤以降にいつもの伸びを欠いた。表彰台を狙ったが、前回の平昌五輪の8位を上回れず15位に。それでも「メダルにはほど遠い順位となったが、納得している」。過程に満足しているからだ。
20代後半に急成長し、30歳で初出場した平昌五輪。37秒67と悪くないタイムで8位に。目標のメダルには届かず、引退した。「体は動くが、完全燃焼できたと思った」。所属先のイヨテツ(愛媛)に戻り、ジュニア世代のショートトラックチームの指導に当たった。子どもたちに教えるうちに「今までと違う気付きがあった。スケーティングの姿勢について分かりやすく教えようとするうちに、別の視点があると感じた」と話す。2019年の春に再び「大好きな」スピードスケートの世界に戻り、ナショナルチームに復帰した。
1年の間に筋肉が落ち、痩せてしまった。持久力は問題なかったが、「パワー系のトレーニングで力をどうやって入れていたのか分からなくなっていた」と振り返る。時間をかけて戻し、さらに昨夏には平昌前より筋力が上回った。
遅咲きのスプリンターは、殻を破り切れず、所属先を転々とするなどした苦労人。特に山梨学院大を卒業した直後は大変だった。現在白樺学園高スケート部の監督を務める和田貴志さんの橋渡しで、トリノ五輪8位の大菅小百合さん(同高出)と練習できるように。今回の現役復帰の際も相談したという。
周囲のサポートを受けながら、さまざまな経験を経てたどり着いた北京。平昌は悔しさから「泣いて終わった」。今回は「笑って終えることができました」と爽やかに話した。